
capturing in prose

This article was written only in Japanese.
「ここは異世界ですね。ガラス張りのタワーやコンクリートのオフィスビルがぽっかりと開いた穴に落ち込んでしまったようです。」
そう話しかけると、忙しそうにファイルを束ねていた手を休め、フロントの大柄な男は胡散臭そうな目を向けた。
「何か誤解されているようです。ここもまたパリに違いありません。いつでもパリは世界の先端にいました。鉄を組んだエッフェル塔も、サンラザール駅も、いつも先端だったのです。ここが他と違う理由はないのです。」
背にある壁に貼りつくように並べられた木枠にファイルを収め、ボールペンをカウンターのペン挿しから抜き出すと、フロント係はあらかじめカウンターに隠していたとでも言う様に地図を取り出しておもむろに丸を付けた。
「あなたは今ここにいます。どの観光客もが期待するパリはこの辺り一帯です。行き方は分かりますか?」
もちろんわかっている。モンパルナスに来るのは初めてではない。フランス西部への玄関口であり、観光地から少し外れたここは、ビジネスライクな街としての顔も持っている。
「それは結構。重厚な石の街がお望みならまだ時間はたっぷりあります。夏で良かった。あと2時間は明るいでしょう。もっとも、石の街はまだまだなくなりはしません。明日でも、来年でも大丈夫でしょう。あそこは時間を止めてしまった街ですから。」
ルーブルの地下に広がるショッピングモールはどうなのかと反論しかけたが、言葉は音にならなかった。それはどうでも良い事だった。フロント係の男には観光地の喧騒が好きになれないだけの事だろう。そう思いあたったのだ。誰にでも好きになれない場所はある。
「では、夕食がてら歩いてきます。」
そう言ってクロームの枠が斜光に反射して眩しいガラスの回転ドアに向かおうとした時、フロント係はもう次の仕事にとりかかっていた。回転ドアは、押そうとする前にすでに廻り出していた。
外に出てゆっくりと周囲を見渡すと、すぐ先のレストランの入り口には、メニューを書いたボードと、赤いテーブル3つと藤田嗣治の書いたような淡い茶色の猫が静かにあった。猫はテーブルの足の間に小さくなって、アールヌーボー風のデザインの一部を成していた。その藤田と夕食を共にするのも一興だとは思いながら、その近すぎる場所に腰を下ろす気にはなれなかった。せめて2ブロックくらい歩いてからでなければと義務感のように何かを感じていたのだった。レストランの先には19世紀のものと思われる石造りの街が見えていた。私は踵を返して、近代的なビルがそびえる駅へと歩き出した。すれ違ったムスリムの女性は、聞きなれない言葉で電話をしていた。
見知らぬ土地への憧れとわずかな躊躇が重なりあって旅は前に進んで行く。時にホテルのドアの隙間から差し込まれた招待状が、時にドアを開け瞬間に目を合わせた旅人のぎこちない挨拶が、異文化への出会いのきっかけとなる。そうした意味で旅行文学に分類されるのかもしれないが、それは同時に異空間にある自分を鏡で見る内省の部分を読者側に強制しているようでもある。単に異国を旅する憧れの部分だけでは説明しようのない、孤立感とも違った異質な自分がそこにある。異文化と思ったものは、そこでの日常であり、日常と思ったものこそがそこに紛れ込んだ異文化である。それが旅だろう。
読み出せば間違いなく旅に出たくなる。マラケシュの喧騒は、読後もいつまでも耳に残る。
いつものように、前半のストーリーは、感想代わりの自分なりのオマージュである。今回は実話ではないが、知人の言葉と実際のホテルでの会話とをミックスして再構成した。
最近読んだ本
マラケシュの声 ー ある旅のあとの断想 (法政大学出版局)
エリアス・カネッティ(Elias Canetti) 著、 岩田 行一 訳

(written only in Japanese)
京急に乗ったらミシュランとの提携企画なのか、三浦のいくつかの写真とともに、城ヶ島がミシュランでふたつ星となったようなことが書いてあった。神奈川とその周辺地域に住む方以外には三浦半島も京急電鉄もいまひとつ位置関係がわかりにくいかもしれないが、ともかく手近な観光地と言うか、ふらっと海を楽しみに行く場所である。だから、正直に言えばミシュランふたつ星と言われてもピンとこないところもある。三浦半島から羽田空港までカバーする京急電鉄からすれば、これを機会に三浦を見直しましょうといったところか。どこかに歴史すら感じる田舎の港町とリゾートと新興住宅街を混ぜ合わせたような葉山から、カタカナで書くほうが似合いそうな大人の影を漂わせるヨコスカを経て、観光地としての油壺や城ヶ島の突端まで役者はそろっている。なるほど、ミシュランに選ばれる日本らしさも充分理解できる。それでもなお、私にような横浜市民にとっては身近なお出かけスポットが三浦である。
日本では、ミシュランと言うとレストランの格付けみたいなところがあって、旅行ガイドの方はあまり知られていない。例えば歴史的背景やその遺構に事細かに説明があったりして、なかなか日本の旅行ガイドにはない魅力があるのだが、オシャレなガイドブックになれた日本人には合わないのかも知れない。
面白いことに、このミシュランの日本旅行ガイドは、日本では「グリーンガイド・ジャポン」と呼ばれている。伝統的に緑の表紙が使われており、まさにグリーンガイドである。ミシュランはフランスの会社であるので、地域名だけはフランス語にしたかったのか、何故かジャパンや日本ではなく、地域名にはジャポンが使われている。英語とフランス語がカタカナで書かれているあたりに「おフランス」なニュアンスが見え隠れしないでもない。それでいて、この「グリーンガイド・ジャポン」に日本語版はない。昔からミシュランの旅行ガイドを知っている身からすると、なんだか妙な気分である。そもそも、古くから使うひとは「ギドヴェール」と呼んできた。ガイドのフランス語であるギドに緑を意味するヴェールなので、グリーンガイドはそのまま直訳でもある。
そう言えば、数年前から使っているクリアフォルダ(プラスチックの紙挟み)には、ミシュランのガイドブックの古い広告がデザインされている事を思い出した。古いと言っても1972年と1995年なのでひどく昔と言う訳でもない。出張で日本に来たフランス人はそれを見てこう言い放った。
「ずいぶん古いねぇ。そんな古いガイドじゃ役立たないよ。」
まぁ、その通りではある。数十年前程度では、単なる古本だろう。


When I visit European countries, I’m always looking forward to finding new table waters. You may have a question why I’m interested in just a glass of water. It is just a bottle of natural water and common in Europe, isn’t it? Is it difficult to buy pure bottled water in Japan? No. You can easily find many kinds of natural waters in any supermarket and tap water is completely safe. What I want to find is hard water, having high mineral content. One of my favorites is BADOIT which is popular in France. It is slightly sweet with taste of magnesium and calcium, especially good for intensely flavored dishes.
ヨーロッパを訪ねる際にいつも楽しみなのはレストランでたのむ水である。単なるコップ一杯の水が何故楽しみなのかと訝る向きもあるかもしれないが、楽しみにしているのは、いわゆる硬水だ。フランスのどこでもお目にかかるバドワ(日本で買うと現地の何倍もの値段だが)が特に好みで、ミネラルの苦味と甘みが味の濃い料理によく似合う。

It’s a good season to have a lunch under the fresh and undiluted green air, isn’t it.
外で新鮮な空気を感じながらランチするには良い季節である。
In response to the weekly photo challenge, Pure by The Daily Post.
It must be easier to handle with numbers. I know well. I was (and perhaps I’m still) a computer engineer and coded many lines of software which linked someone to anonymous numbers. Now sometimes I wonder if it is really the best way to manage something with numbers.
“What is your identification number?” – “629”
“When did you miss it?” – “14:28, 5,6,2016”
“Which taxi did you take?” – “Y43”
In response to the weekly photo challenge, Numbers by The Daily Post.