Bonne journée

矢板


 先週の那須の話の続き。

 再び那須を訪ねたのは、矢板のりんごを買うことが目的の一つでした。栃木県に縁のない人には、意味不明な説明ですね。少し説明しておきます。

 那須高原は、日光の東側に広がる高原というイメージかもしれません。もう少し細かく見れば、那須高原に関わる場所には那須塩原市と那須町があって、その西側は矢板市、南側はちょっとした工業地帯もある大田原市となっています。もともともっと広い地域に那須郡があって、今でも那須烏山市という市もありますが、ともかく、その那須という名のついた場所の山側の部分が那須高原で、那須温泉はその山を上って行ったところにあります。茶臼岳や殺生石でも有名です。おしゃれなカフェもこの辺りに集中しています。那須の御用邸もこのあたりです。もうひとつの有名な塩原温泉は少し離れた場所にあって、こちらは矢板市寄りの場所にあります。ようやく「矢板」という名前が出てきました。
 矢板市も都市部がメインですが、那須との境界である北側にりんご園がいくつもあります。谷間に広がる農地とりんご園はのんびりとした風景で、矢板にこんな場所があったのかと驚かされました。駅から離れているので電車で行くのは容易ではありませんが、車であれば、比較的簡単です。何しろ、矢板北PAにスマートICが併設されていて、ここから出るとものの5分でりんご園が集中する場所に着きます。矢板北スマートICは、PAに立ち寄ってから出ることもできますので、なかなか便利です。

 矢板は分かったが、栃木県でりんごとはどういうこと?というのも説明しなければなりません。農水省の統計を見ると、栃木県はリンゴの生産量の15位にも入っていません。多分、生産量シェア0.1%とかいった世界かなと思います。それでも観光りんご園も含めてたくさんのりんご農家があります。地図を見ながら探す必要もありません。道沿いにたくさん販売店が並んでいます。
 シェアの低い地域だから差別化しているのか、この辺りのリンゴ園は、葉とらず無袋栽培が多いようです。当然完熟での販売なので、間違いなく美味しくフレッシュなりんごが買えます。個人経営がほとんどなので、Webページもあまりありません。行って自分で見てみるしかありません。10月初旬は、秋映とシナノスイートが季節でした。秋映は、シャキシャキとりんごらしいりんごですし、日持ちもするので、買いやすいりんごかなと思います。

 今回は、初めて聞く「なっぷる」という品種の黄色のりんごも買いました。Webで探してみてもほとんど情報がありません。ほとんど市場には出回らないとのことで、売られていないなら記事もないのは仕方ないところです。食べてみたところ、蜜のたっぷり入った甘みの強い品種ですが、酸味もあって少しパイナップルのような味もしました。きっとだから「なっぷる」なのだろうと思います。柔らかくてクリーミーな食味なので、日持ちはしません。硬いシャキシャキりんごが好きな方には物足りないかも知れませんが、味はかなり良いので、試してみる価値ありです。手塚郁夫りんご園のリンク(https://tetsuka-apple-farm.com)を貼っておきます。

 りんごだけのために行くのもなあという方、大丈夫です。一般道でも再度高速に乗っても、那須高原は目の前。矢板のりんごと那須高原の牛乳の組み合わせも可能です。北関東にある牧場なんて観光用の小さな牧場でしょ?なんて侮ってはいけません。本州では最も大きく、歴史のある牧場がたくさんあります。そういえば、今牧場さんのウォッシュチーズ「りんどう」も食べました(往復500km、何回行ってるんだ!)。本物の味がします。おすすめです。

Bonne journée

Nasu 那須

English texts at bottom

 幼少の頃を過ごした栃木県の北にある那須が、以前に住んでいたブルターニュと似ているということにはずっと気が付かなかった。

 那須は高原にあるから土地が広いわけでもないが、一方でブルターニュは山も少ない平地だから、広い牧草地が広がっていたりする。それでも似ていると感じるのは、もちろん乳牛を育てていると言うだけでなく、どこかのんびりとした風景が広がっているからなのだろう。

 今年になって久しぶりに那須高原を訪ね、あまりによかったので、ひと月後にまた那須を訪ねてみた。今住んでいる横浜からは近いわけでもないので、もうしばらくは行くこともかなわないだろうが、のんびりとして美味しい食事をするのには良い場所かなと思う。

I never realized until recently that Nasu, located in northern Tochigi Prefecture where I spent my childhood, was similar to Brittany, where I used to live.

Nasu is on a plateau, so the land isn’t particularly vast, but Brittany is a flat area with few mountains, so there are vast pastures. The reason I feel they’re similar is not just because there’a a lot of milk farm, but also because of the relaxed atmosphere of the scenery.

Last month, I visited the Nasu Plateau for the first time in a long time, and I liked it so much that I went back a month later. It’s not exactly close to Yokohama, where I live now, so I probably won’t be able to go again for a while, but I think it’s a great place to relax and enjoy delicious food.

お土産いろいろ

Bonne journée, Cross Cultural

シェーブル(chèvre)


 「フランスに住んでいたこともあるのにワインを飲まないなんてもったいない。」

 何度も言われた忠告だ。余計なお世話だと言いたいところだが、まあ、その通りです。はい。
 飲まないのではなくて、たくさんは飲めない体質なのである。なんだか先週の温泉ポストと似た展開だが、誰だってそういった部分はあるわけで、たまたま二週連続でそんな話を書く事になった。
 で、今週の話はワインではない。おい、ワインを飲まない話じゃなかったの?と言われそうだが、少なからぬ日本人がワインと関連すると感じているチーズの話である。

 フランスのそれなりに伝統的な形式のレストランに行けば、チーズはメインとデザートの間に出てくるものである。何種類ものチーズが載せられたワゴンがテーブル間に引っ張り出されて、客は講釈を聞きながらチーズと食べ方を選ぶ。
「これはこのまま。好きだからカビも残して、もう少しドライなイチジクジャムはないかな。」
 そんな調子で食べたら食い倒れるというレベルの量でメインの後にチーズを食べて、これまたメイン並みのデザートに突入だ。そのチーズに合わせてデザートワインを頼んだりはするが、チーズとワインはセットではない。
 そもそも、大抵の客はそこまで食べない。何しろ、8時くらいからオリーブあたりをつまみに中庭での食前酒を楽しみ、全員が揃うのを待ってテーブルについて食事をオーダー、前菜が出てくるのが9時という状況で、チーズの時間は10時過ぎ、もしかしたら11時。その時点でもう腹一杯なのだ。それからデザートを食べて、チョコレート付きのコーヒーを飲んだら12時。もう、ほぼシンデレラ。というか、そんな文化がシンデレラの背景にはあって、和食とは料理だけでなく、スタイルも対極にある。

 そのチーズだが、フランスで大きめのスーパーに行くと、日本のスーパーの肉のコーナー並みに広い面積を使ってチーズが売られている(下に写真があります)。場合によってはそれ以上である。時々行く市場には、チーズ専門店があって、パッケージされていないチーズがずらりと並び、時には試食しながらチーズを選んだりもする。フランスの伝統食材なんだなと実感できる場所である。
 よく行っていた社員食堂(複数企業と契約しているカフェテリア)にももちろんチーズはあって、メインとサラダとデザートの代わりに、メインとサラダとチーズを選べるようになっていた。で、このチーズが日替わりで、二日に一度はヤギのチーズが選択肢にあった。日本だと、シェーブル・チーズというらしいが、シェーブルはフランス語でヤギという意味なので、きっとそれらしく名前をつけたのだろう。少し酸味やコクが強いので、チーズが苦手な人には好まれないかもしれないが、牛のチーズよりもずっとチーズらしさは感じられる。

 このヤギのチーズが日本ではなかなか買えない。チーズ専門店に行っても、ほとんど置いていないし、あってもどこか風味が落ちる。確かにフランスでコメを食べたら風味が悪いと感じるのだから、同じことなのだろう。
 ところがである。先日、那須の今牧場で美味しそうなチーズを見つけてしまったのである。値段は安くはないが、そこはコメだってフランスでは日本の3倍以上するわけで、日本でちゃんとしたチーズを買えば高いのは仕方ない。
 この今牧場の製品、周囲の他の大手売店でも買えないこともないが、牧場でも買える。牧場と言っても、観光牧場ではないから、牧場の建物の一角に狭い売店があるだけである。おい、ここで良いのか?と思いながら入ってみたら、確かに売っている。しかもフランスの市場で買うみたいなショーケースにこじんまりと置いてある。
 こんな売り方していたら、きっと美味しいに違いない。しかも試食が出来るという。フランスみたいにその場で切る形ではないが、ちゃんと確かめられるのは嬉しい。そこで食べてみたらしっかり本物の味がするではないか。牛も美味しそうだが、ヤギも複数種類ある。わあ、どれにしよう。そんなわけで、3つほど買って帰ったのである。
 まあ、最初から買う気満々である。何しろ、ちゃんとクーラーバッグに保冷剤をたっぷり入れて持っていったくらいである。

 というわけで、ヤギのチーズの美味しいものが、ここで買えます。飛行機代分得しました。

Bonne journée

記憶する大地 (2)


赤茶色の西風が吹きはじめた昼下がりは気だるい。
晩夏の風に転げ続けていたひかりは、くすみ葉の隙間を溢れ落ちる。
どんなに鮮やかな空にも時が満ちて終わりを告げる時期が来る。
カサカサと鳴り続けるクヌギの葉音も、
用を終えた藁のかけらの舞う西風の中では、
クイニーアマンから剥がれ落ちたカラメルのように甘く、
奥歯の隙間に苦味を残す。
赤茶色の西風が吹きはじめた秋の昼下がりは気だるい。

Afternoon, when the russet west wind begins to stir,
slows into languor.
Light, rolling on the late-summer breeze,
spills through the narrow seams
of tired, fading leaves.
No matter how vivid the sky,
there comes a moment
when fullness turns to ending.
The rustle of oak leaves goes on,
in the west wind where fragments of straw are carried,
sweet as the caramel flaking from a kouign-amann,
yet leaving behind
a faint bitterness
at the back of the teeth.
Autumn afternoon, when the reddish west wind rises,
drifts in quiet languor.

久しぶりに、まだ作品として定まらない「記憶する大地」の断片です。

It is obviously not perfect even though Google translation and ChatGPT were also used. It’s always difficult to translate a poem into different languages.

Art, Bonne journée

la vie


 雨がザワザワと音を立てて落ちる午後だった。空を見上げると、森の中で騒ぎ立てる梢の隙間から、冷たい雫が額に落ちてくる。まだ日没までにはだいぶ時間があったが、ぽつりぽつりと明かりが灯り始めていた。
「この小道を奥まで進むと入り口があります。途中に小さな教会があって、その中は自由にみていただいて構いません。お写真をお撮りになっても結構です。でも、中は撮影できません。」
入り口のちょっとした門の屋根の下で、案内の方が丁寧に説明する。その門をくぐり、曲がりくねった小道を歩いてきたのだった。森の中は、多少のアップダウンもあって、小川の流れる谷の部分には小さな橋もかかっていた。
 迷うようなことのない一本道だった。それでも、要所要所に猫がこちらですと道案内をしていた。その案内に導かれて森を抜けると、赤と白の対比が鮮やかな扉が現れる。藤城清治美術館の展示室がそこにあった。

 百歳を超えてまだ現役の藤城清治の美術館が那須高原にあると知って、立ち寄ってみた。あいにくの雨だったが、施設案内のWebページに掲げられた写真とは違って、雨の降る足元の少し暗い美術館は、藤城清治の作り出す影絵のようにちょっとばかりファンタスティックな様相を見せていた。
 どこかの観光地にあるような小さな美術館というと、個人の趣味みたいなところもあるが、藤城清治が自分で作りたくて作った美術館ということで、想像以上に濃密な空間になっている。もう、これでもか、と言わんばかりの影絵の世界である。その中身については、美術館のWebページを見ていただいた方が良いし、写真撮影はできないから、ここに出せるのは外の写真だけである。それでも冒頭の道案内の猫を見ただけで、どことなく想像はできるかもしれない。

 藤城清治が飼っていた猫の名前はラ・ビー。その名前を冠したカフェも東京にあるらしい。自分にとっては、ケロヨンや笛を吹くこびとが真っ先に思いつくが、ラ・ビーのファンも多い。もし、藤城清治の影絵が好きなら訪ねる価値はある。小さな美術館なのに思いがけず長い時間を過ごし、ちょっと足が痛くなったというくらいには楽しい。

藤城清治美術館(那須)