Books, Photo

A Book: 見えない都市

201801-311Written in Japanese.

その都市はいったいどこにあるのか。強大な力を持って果てしなく領土を広げゆくフビライと、地の果てまでひとり行くマルコ・ポーロが、それでもまだ知ることのできない都市と、どこかで見た都市を巡って時を過ごす。見知ったようなそれでいて遠い世界のお伽話が、電車で向かう仕事先とさえ重なり合う重畳された時間の流れの中で、じわじわと響きあう。やがて、読者である自分自身がその都市のひととなった。

電車の中にあって片手をあげて寄り添う人々は、誰ひとり言葉を発せず、互いに隣には誰ひとりいないようにふるまっている。たとえあなたがそこで何を目にしようがそれはあなたの脳が見た景色であって、隣で光る板を睨みながら首を捻じ曲げた若者がそこにいたとは限らない。なぜならその若者にはあなたが見えていないからである。それがトキオの慣わしなのだ。あなたがどれほど信じたとしても、時折電車がゆれて黒びかりするバッグが脇腹を押したとしても、それはあなたが感じていると信じる何かではあっても、存在している証明ではない。その若者がようやく次の駅で降りてあなたのとなりに呼吸する空間が出来たとしても、その若者はあなたの存在を微塵も覚えていない。あなたは存在すらしないのだ。あなたが通り過ぎたトキオの街が本当にあったのかすら怪しい。なぜならトキオの住人は誰一人あなたのことを覚えていないのだから。それでもトキオはそこにある。征服されざる街として。

最近読んだ本

見えない都市 (河出文庫)
イタロ・カルヴィーノ 著、米川 良夫

Photo, photo challenge

Weekly Photo Challenge: Weathered

201801-301

Even when you are passing at a temple with no name (probably you just don’t know it) and even if you are not a Buddhist (probably not anyway), old wooden figures at a gate would stand out in your memory for a while. Their weathered faces are made by rain, wind, sun beam and awe.

風雨にさらされ、夏の光に耐え、畏敬の眼差しに触れ。

In response to the weekly photo challengeWeathered by The Daily Post.

Bonne journée, Photo

vice

201801-211

都会に雪の予報があれば、
うんざりして何事か失敗を取り繕うような気分で過ごしながら、
実はひとひらも白いものが舞わないその日に、
何かを失ったような残念な気分をどこか抱くのは、
雪が降る街を離れて何年も過ごした夜の慣わし。

鼻の奥に酸っぱい痛みを感じながら
早朝の冷えきった新聞受けをさぐり、
白金と赤に輝きながら距離を縮める木星と火星を仰いで吐く息に
始まったばかりのいちにちを感じるのは、
どこかでつまらない嘘を隠す今日の後ろめたさ。

小さな悪徳がなければ息苦しく、
微かでも美德がなければ呼吸すらできない。

雪の写真は昨年のもの。

201801-212