Bonne journée, Cross Cultural

Triskelion(トリスケリオン)

(English text at bottom)

 何はともあれお断りしておかなければならないのは、私自身がトリスケルあるいはトリスケリオンの研究者でもなければ何かしらの知見があるわけでもないということである。それどころか、トリスケリオンがそもそも何かということの何らかの確定的研究成果が世の中にはないらしい。つまりは、ここに書かれていることを鵜呑みにしない方が良い。
 分かったようなことを言うなら、トリスケリオンは日本語で三脚巴紋と言う。三脚と言う意味は、膝の少し曲がった片方の人間の足を横から見たもの3本が、足の付け根を中心に120度で繋がった巴紋様という意味であり、同時に渦巻きが3つ繋がったものの場合でもある。そもそもこの説明が意味不明なのは理解している。脚と渦巻きは全然違うではないか。
「あんた分かって書いているのか」
とお叱りを受けそうである。ただ、その足の形の紋様はヨーロッパ中にあって、ある意味トリスケリオンの典型的な紋様であるし、脚の代わりに角笛だったりすることもある。これが、アイルランドやフランス・ブルターニュ地方のケルト系の場合には渦巻きとなる。
 この渦巻き方は、ヨーロッパどころか世界中にあって、たとえば日本にあるものは左三巴紋などと呼ばれている。だから
「だからそれは何なんだ?」
という事であれば、Wikiあたりを読んでいただく方が良い。
 トップの写真は、ブルターニュの公園に作られた花壇の一部である。ベゴニアがトリスケリオンの形で植えられている。トリスケリオンはブルターニュ半島のシンボルであり、様々な場所に使われるありふれた紋様なのである。
 一番下の写真は、ノートルダム修道院(浅間神社と同じで至る所にある)の史跡のひとつで撮ったものだが、トリスケリオンの痕跡が残っている。12世紀と15世紀の部分が残っているらしいが、この紋様の部分がどちらなのかは分からない。

First of all, I must state that I am not a researcher of the Triskel or Triskelion, nor do I have any knowledge of them. In fact, it seems that there is no definitive research result on what the Triskelion is. In other words, it is better not to take what is written here at face value.
If I were to say something that sounds simple, the Triskelion is called a “三脚巴紋” in Japanese. The meaning of the Triskelion is that three legs(三脚) of a human with a slightly bent knee are seen from the side, and are connected at 120 degrees around the base of the leg, forming a Tomoe(巴) pattern(紋), and it can also mean three spirals connected together. I understand that this explanation is unclear to begin with. Aren’t legs and spirals completely different?
I’m sure I’ll be scolded. However, the pattern in the shape of a foot is found all over Europe, and in a sense it is a typical Triskelion pattern, and sometimes there are horns instead of legs. This forms a spiral in the case of the Celtic peoples of Ireland and Brittany, France.
This spiral pattern is found not only in Europe but all over the world; for example, the one in Japan is called the “左三巴紋”. So, if you’re wondering “so what is that?”, it’s best to read up on Wiki. The top photo is part of a flower bed in a park in Brittany. Begonias are planted in the shape of a triskelion. The triskelion is the symbol of the Brittany peninsula and is a common pattern used in many places. The photo below was taken at one of the historical sites of Notre Dame Abbey, and traces of the triskelion remain. There are apparently parts from the 12th and 15th centuries remaining, but it is not clear which part this pattern belongs to.

Bonne journée, Photo

summer

フランスの北西部にあたるブルターニュ地方は夏も涼しい地域なのだが、今日のブルターニュ南東部の気温は37度と異常な高温となった。フランス中央部から西部にかけては40度超えとのことなので、それでもまだ良い方なのかも知れないが、何しろ個人ではエアコンを持っていない地域だから、日中は窓を閉め切ってじっとしているしかない。リフレッシュするなら、早朝に出かけて森の中や運河沿いを散歩するのが一番かも知れない。夏至の頃は人がいっぱいで騒音も多い季節だが、さすがに今日は静まり返っている。

気温が高いことをもって温暖化というのは違うとのこと。大西洋側から高気圧が張り出してアフリカからの熱波をもたらすのは毎年1〜2回はあるから、異常高温と言っても気象学的に異常というわけではない。ただ、年々夏の暑さが早く来るようになって、むしろ夏が涼しいような気がするというのも時々聞く話だ。温暖化によりメキシコ湾流が蛇行し、温暖な冬をもたらしてきた暖流の恩恵がなくなることで、あまり雨の降らない寒い冬と冷夏が温暖化の影響とも言われている。寒くなるのに温暖化というのも妙な気持ちになるが、そんなものだろう。それでも確実に平均気温は上がっている。

写真ではサイズ感が伝わりにくいかも知れないが、写っている宿木は通常の倍のサイズはあろうかという立派なものだった。大きいからか、乗っている枝が随分と下がってきている。そんな様子を楽しんだら、日が高くなる前に家に帰る方が良い。午後になればきっと暑い。

Cross Cultural, Photo

城壁

フランスの衛生上の制限はほとんどが3月末までに撤廃されて、ふらつきながらも新規感染者数が明確に減少してきたこの初夏は、まるで3年前に時間が戻ったかのように観光客が増えてきた。そんな中、もちろんいつ行っても驚かされるモン・サン・ミシェルあたりを訪ねてみるのも悪くないアイデアなのだが、他人を気にしないツーリストに溢れた狭い場所を歩き回るのもどこか落ち着かない。今でも身近なところに新規感染者がいて、決して感染が収まったわけでもない。人口6000万人に対して毎日2万人以上が感染しているのだから、狭い場所での人混みは安全とは言えない。しかもここ1週間は移動平均で増加に転じている。

それであれば、たとえ有名ではなくても近くの旧跡周辺を散歩するのはどうか。ブルターニュは、ありとあらゆる場所が歴史の一部なのだから、わざわざ混雑する中に行く必要などない。

かつてブルターニュ公国がフランス王国とは独立して存在していた頃、ブルターニュの東の端は国境防衛の最前線であり、美しく華やかで優雅な城よりも何日でも持ち堪えられる丈夫な城が必要だった。城壁の外には防衛と飲み水の確保のために川が流れ、洗濯場では人々が賑やかに会話を楽しんでいたに違いない。城壁の中は縦横に道が通り、商店が軒を連ね、その中央にはカソリック教会が置かれて心の支えとなった。そんな街を想像しながら眺める旧城は、今でも異様なまでに力強くその姿を誇示している。

だからブルターニュの散歩は楽しいのだ。見上げた城壁は市役所の壁なのだから。

Bonne journée, Cross Cultural

five tall trees

見慣れた公園を歩いていたら、急に5本の背の高い木がそれまで見たこともなかったようにこちらを見つめていて、訳もわからず威圧感を覚えたのはどうしたことか。

その5本のスッと立ち上がった木は、多少の権威でも背負っているようにアイロンをきちんとあてた制服を着て、両腕を腰の横に置き、落ち着き払った様子ではあっても気迫に満ちた眼差しをこちらにむけていた。気づくまではゆっくりとこちらに歩いてきていたのかもしれないが、背丈よりは少し遠い距離を置いて立ち止まり、何かを言いたそうにしているのだった。その5本の木を見上げて慌てて写真を取れば、木々は一言も発することなくいつもの木に戻っていた。

だから妖精の住む国の朝の散歩は面白い。

Bonne journée

ブルターニュ#7

「素晴らしい教会ですよ。すっと力強く建った尖塔が見事です。旧市街には中世の建築もいくつか残っています。季節の花に彩られた街を存分に楽しんでください。水車小屋も面白いかも知れませんね。」
右手のペンを忙しく動かしながら、案内人はいつになく上機嫌で街の散策を強く薦めるのだった。焼き物はどうですかとガイドブックに書いてあったことを興味本意で尋ねると、彼はペンを止めて両方の襟に手をやってこう続けた。
「あそこまで行かなくてもその辺の骨董市で安く買えますよ。ホテルの近くには木曜日に市が立ちます。正直、私には区別がつきません。少々古臭く見えますがね。運河沿いを歩きたいなら行っても良いかもしれません。」

(ブルターニュ案内の7回目をアップしました。この続きはこちらから。あるいはメニューの「旅」から辿ることもできます。)