
「素晴らしい教会ですよ。すっと力強く建った尖塔が見事です。旧市街には中世の建築もいくつか残っています。季節の花に彩られた街を存分に楽しんでください。水車小屋も面白いかも知れませんね。」
右手のペンを忙しく動かしながら、案内人はいつになく上機嫌で街の散策を強く薦めるのだった。焼き物はどうですかとガイドブックに書いてあったことを興味本意で尋ねると、彼はペンを止めて両方の襟に手をやってこう続けた。
「あそこまで行かなくてもその辺の骨董市で安く買えますよ。ホテルの近くには木曜日に市が立ちます。正直、私には区別がつきません。少々古臭く見えますがね。運河沿いを歩きたいなら行っても良いかもしれません。」
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カンペール焼きと聞いて何も思い浮かばなかったとしても、カンペール焼きの独特な絵付けがなされた皿を見れば、「あぁ、あれか」と思い出す人もいるかもしれない。ルイ14世の頃から続く伝統の焼き物であり、カンペールを代表するお土産品として、その工業コピー品もたくさんある。だから骨董市かどこかで安いカンペール焼きを見つけても、それが本当にカンペール焼きかどうかは良く見なければ分からない。カンペールで買うより骨董市のほうがずっと安いなどと言われるのは、案外そんな意味である。もっとも、それが気に入ったのなら、コピーされた印刷品だろうがなんだろうが、どちらでも良いに違いないのだが、どうせなら本物が良いに違いない。
実のところ、カンペール焼きが街の主要産業であったわけでもない。カンペールの街は、海から奥深くまで入り込んだ入江でもあるオデ川を中心とした街なのであって、港街らしい様々な産業が広がった、西の果ての「都市」なのである。カンペール焼きは、いくつもある産業の小さなひとつだったわけだ。もちろん優れているから今でも残って愛され続けているのだが、焼き物の街というのは誤解である。
焼き物を楽しんだら、街の中心部に向かうと良い。ブルターニュの歴史ある街が皆そうであるように、カンペール旧市街には、ごく自然に歴史的建造物が残されている。サン・コンランタン教会の80mもあるゴシック様式の尖塔は遠くからも見えるし、伝統的な木造建築は2階が突き出た古い様式を今でも残している。オデ川沿いを散歩しても楽しいし、旧市街をふらっと歩いてみても良い。
カンペール焼きは、実際のところ南仏プロバンスの職人によって洗練されたものへと変化し、アンリオ社とともに発展してきたものである。その独特の絵付けは芸術の域に達していると言っても良いが、アンリオ社のボウルを買うだけで、その街の美しさを楽しまなかったらもったいない。至る所に写真でも撮りたくなるような風景がある。隅から隅まで歩けば、たっぷり1時間はかかる。
フィニステール県第二の都市は、それでも人口15万人にも満たない小さな街である。





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ここはどこ?
カンペール
Quimper
行くべき?
絶対行く!・行く価値あり・時間が余ったらね
URL
https://www.quimper-tourisme.bzh/en/
位置
