フランスのあてにならない天気をいつか忘れてしまったような強烈な陽射しの痛みがむしろ心地よい夕方、夏至を過ぎるとバーゲンの季節というのを誰もが当たり前と了解している街のショーウィンドウは、どこもかしこもセールの華やかなポスターにあふれていた。バーゲン初日に前々から狙っていたお目当てのものを安く手に入れ、膨らんだ大きめのバッグを抱えた人々で街はいっぱいだ。18世紀から19世紀の大切に使われる続けてきた石造りの建造物も、この時ばかりは刻み込まれた歴史を忘れ、今やセールを告げるビルボードである。
木々は春の柔らかなグリーンから夏の力強い深緑へと姿を変え、吹き抜ける風と陽光に微かに震えながら飛び回る鳥たちに休息の場を提供する。そんな自然の喜びを知ってか知らずか、若い一団がそれぞれ楽器を抱えてバーゲン真っ只中の街を歩いて行く。旧市街のレストランはきっと今夜は大騒ぎに違いない。学生もそろそろ授業が終わり。仲間同士で楽しむ日々ももう少ししかない。今、羽目を外して楽しまなかったら、いったいいつ楽しもうというのかと言わんばかりの様相だ。いつも最後の木曜は大騒ぎ。独立心の高い彼らも、金曜はママの元に帰るのだ。
ふと路上に止められた乗り合いタクシーのミニバンを見ると「我々はUBERではない」と手書きのアジテーション。UBERに反対する暴動もニュースになったが、果たして反対しているのか、暴動に巻き込まれないようにしているのか、はたまた似たようなサービスをするライバルが邪魔なだけなのか、その背景は甚だ危うい。その横を爆音をたてて大きなバイクが通り過ぎる。あっちに行けと言わんばかりに人だかりができ、少し傾きはじめた陽光の反射を覆い隠す。反対するのもいろいろ。夏が騒がしいのもいろいろ。
夜にはまだ早い午後7:30の繁華街。
(この文章は、夏至の数日後に書かれた)






