Cross Cultural, Photo

城壁

フランスの衛生上の制限はほとんどが3月末までに撤廃されて、ふらつきながらも新規感染者数が明確に減少してきたこの初夏は、まるで3年前に時間が戻ったかのように観光客が増えてきた。そんな中、もちろんいつ行っても驚かされるモン・サン・ミシェルあたりを訪ねてみるのも悪くないアイデアなのだが、他人を気にしないツーリストに溢れた狭い場所を歩き回るのもどこか落ち着かない。今でも身近なところに新規感染者がいて、決して感染が収まったわけでもない。人口6000万人に対して毎日2万人以上が感染しているのだから、狭い場所での人混みは安全とは言えない。しかもここ1週間は移動平均で増加に転じている。

それであれば、たとえ有名ではなくても近くの旧跡周辺を散歩するのはどうか。ブルターニュは、ありとあらゆる場所が歴史の一部なのだから、わざわざ混雑する中に行く必要などない。

かつてブルターニュ公国がフランス王国とは独立して存在していた頃、ブルターニュの東の端は国境防衛の最前線であり、美しく華やかで優雅な城よりも何日でも持ち堪えられる丈夫な城が必要だった。城壁の外には防衛と飲み水の確保のために川が流れ、洗濯場では人々が賑やかに会話を楽しんでいたに違いない。城壁の中は縦横に道が通り、商店が軒を連ね、その中央にはカソリック教会が置かれて心の支えとなった。そんな街を想像しながら眺める旧城は、今でも異様なまでに力強くその姿を誇示している。

だからブルターニュの散歩は楽しいのだ。見上げた城壁は市役所の壁なのだから。

Bonne journée, Photo

古橋

特に歴史的価値があるわけでもないが、13のアーチからなる3つの橋が18世紀からここにある。それは何度も整備されたであろう石造の古臭い橋であって、住民が川を越えて反対側に渡るためにそこに架けられた日常の一部でもある。

ところが橋のたもとに設置された説明を読んでいると、歴史的価値などどうでもよいと思えるほどに、時代という時計が逆回転をし始める。1900年頃のセピア色になった写真に写る風景は、今と何ら変わりがないのだ。もちろん、教会は最近立て直されたものだし、左側に見えるChez Edgarというレストランの建物も、100年前とは全然違うものに見える。にもかかわらず、そこにある佇まいは100年前と同じなのだ。100年前と同様に買い物カゴを抱えた人々が橋を行き交い、橋の下ではもうボート遊びをしてはいないが誰もが水辺を楽しんでいる。土曜日になれば教会の広場に朝市がたち、鳥の声が響き渡る初夏を子供達が駆け回る。

街を守るということは、そういうことなのだろうと教えられる。