Bonne journée

ブルターニュ#7

「素晴らしい教会ですよ。すっと力強く建った尖塔が見事です。旧市街には中世の建築もいくつか残っています。季節の花に彩られた街を存分に楽しんでください。水車小屋も面白いかも知れませんね。」
右手のペンを忙しく動かしながら、案内人はいつになく上機嫌で街の散策を強く薦めるのだった。焼き物はどうですかとガイドブックに書いてあったことを興味本意で尋ねると、彼はペンを止めて両方の襟に手をやってこう続けた。
「あそこまで行かなくてもその辺の骨董市で安く買えますよ。ホテルの近くには木曜日に市が立ちます。正直、私には区別がつきません。少々古臭く見えますがね。運河沿いを歩きたいなら行っても良いかもしれません。」

(ブルターニュ案内の7回目をアップしました。この続きはこちらから。あるいはメニューの「旅」から辿ることもできます。)

Bonne journée, Cross Cultural

door

 時々、ドアの向こう側にある世界がこちら側とまるで違ったもののような気がして戸惑うことがある。大きな壁に穿たれた分厚い木材と赤錆びた鉄の枠で誰もを拒む冷たいドアのことではなく、ガラス越しにその向こうが見える薄っぺらな区切り記号でしかないありふれたドアが隔てる世界の話である。ドアノブに手をかけてみればもしかするとスーっと開くはずのそのドアが、ドアに手をかけることすら憚られるほどに二つの世界を分け隔てている。
 だからガラスに反射するその大して意味のない空間を写真に収めたくなるのだ。向こう側にあるものとこちら側にあるものは、同じように息をして、同じように笑い、同じように苦しんでいるに違いない。向こう側に見える冬の空気に燻んだ建物も、何も主張することなくじっとしている樹木も、そこを通り過ぎゆく人々も、名もなくそこにあって、なんらここと向こうに違いなどないものなのだ。
 ただドアを開けてみれば良い。違うと見えたものに差して違いはないはずだ。そう言い聞かせながら日々を過ごす。

フランスの知人のひとりが先日車を買い替えました。燃費の良いコンパクトな日本車で、最近はようやく安いから選ばれる車から良いから選ばれる車になってきたようです。もちろん、買えるならドイツ車だけれどコンパクトなフランス車が良いと考える人も多いので、まだまだ日本車は3年保証だからといった理由がついて回っているのは確かです。とは言え、この知人の買った車は評判も良く、これが欲しいと言って買われる車になったことは間違いありません。

でも、日本で売っているものとどこか違うような気がしてよく眺めさせてもらうと、外見もかなり違っていることがわかります。明らかにヨーロッパ仕様の方が伸びやかなデザインで、車重も概ね同じであろうにホイールすらも違っています。内装を見ても電動パーキングブレーキがヨーロッパ仕様にはついています。同じ車なのに、市場が違うだけでどうしてここまで変えるのかわかりませんが、おそらく日本向けは徹底的なコストダウンをしているのでしょう。同じ名前でも似て非なるものなんだろうなと感じます。

コロナの簡易検査キット(抗原定性検査)がスーパーで買えるようになって、たとえば高齢者と会う前に気になったら検査してみるのが当たり前となった今、とうとう検査キットの価格は1.2ユーロ以下(150円程度)まで下がってきました。日本では2000円以上と言われていますので安いものを探してみましたが、実はほぼ同じものでした。FFP2やN95のマスクもフランスでは1枚当たり20円程度で、日本とは10倍ほどの価格の差異があります。きっと医療関係の認証や物流などの背景があるのでしょう。

今や薄いドア1枚隔てただけの近い世界が、実は全然違うような気がしてくるのは、そんな似ているようでどこかが違う二つの世界が、ガラス越しにすぐそこにある身近な世界になったからなのかもしれません。

Bonne journée, Cross Cultural

3ème…

ヨーロッパ諸国は新型コロナウイルスとの共存に舵を切ったということらしいが、だからと言って新規感染者が減ったというわけでもない。毎日100人にひとりが感染している状況に変わりはない。減少に転じたと言っても、英国はもう面倒になってちょっと調子が悪い程度では検査しなくなりつつあるのが実態のようだし、フランスはその充実した検査体制でも追いつかない水準で高止まりというのが正直なところだろう。2週ほど前は検査待ちが4日以上あったのが現在は2日程度になったらしいが、一体いつの検査をしているのか分からない。それでももはやマスクは必須ではない。フランス政府の唯一の頼りはワクチンブースターで入院を回避することにある。すでに3回目のワクチンを半数以上が完了しているのだから、そこそこ計画通りなのだろう。

あまり楽しい話ではないのでこれ以上は書かないが、共存するということは、経済をしっかり回して日常に戻すということである。フランスは、英国やデンマーク程には規制を撤廃していないが、それでも街には人が溢れ、1月中旬からのソルド(公的なセール=SOLDE)も2月8日までの日程で行われている。今年のソルドがどのくらい売れているのかまだ分からないが、バカンスに海外にも行けずお金が余っているそうなので、そこそこ売れているのではないかと想像している。

ソルドは、年に2回あるフランスのバーゲンセールであって、期間が決められているとか、セール専用品はだめとか、色々ルールがあって面白い。最初からソルドを意識して売ってそうな品物を見かけなくもないが、少なくともセール専用に安く作った製品ではなく、ソルド前から普通に売っていたものしか売ってはいけないことになっているから、ソルド中の品物の品質が悪いということはない。

そうなると、ソルドで買うタイミングが問題となる。ソルドの最初の週末は売れ筋商品がごっそり売れてしまうこともある。以前からショーウィンドウ越しにこれが欲しいなどと品定めしていても、値下げシールが貼られると同時に誰かに買われてしまう可能性だってあるはずだ。でも、最初の値下げは20%だったりもする。もしかしたらもう1週待てば30%オフになるかも知れない。いや、きっと色が売れ筋ではないから半額になるまで待とう。3回目の値下げ(3ème démarque)は今週だ。きっとそんな葛藤があるのだ。で、待てば大抵は物がなくなる。それが道理というものだ。あーあ、とため息をついてももう後の祭り。

ということで、写真の隅に見える “2ème démarque” の文字は、スポーツ用品ブランドのブティックの2回目の値下げである。きっとかなりお値打ち品があるに違いない。その隣、写真の中央はワクチンセンターの入口である。ここでは “3ème dose” で正しいかなどと聞いている。要は、3回目の注射かという質問である。注射より値下げの方が嬉しいが、こればかりは仕方ない。

Bonne journée

ブルターニュ#6

「一度は見る価値がありますよ。ストーンヘンジばかりが巨石文明の痕跡ではありません。ソールズベリーだって同じケルト文化圏なのです。そもそもストーンヘンジの石柱もカルナックの石柱もメンヒルと言いますが、ブルトン語ですからね。」
いや、もう少し分かり易く言ってませんか、そう言いかけた時、彼は顔を上げてこう続けた。
「ああ、失礼。カルナックはなかなか興味深い所です。まずは、案内所の上から眺めてみてください。全体像は空から見るしかありません。展望台になっている少し高い建物がありますから、せめてそこから眺めてみてください。ほんとうに興味がありますか?だったらハイキングのつもりでぐるっと回る方が良いでしょう。でも、観光案内に書いてあったから見てみたいと言うだけの興味なら、展望台で十分です。近くの綺麗な海にでも行ったほうが良い。」

(ブルターニュ案内の6回目をアップしました。この続きはこちらから。あるいはメニューの「旅」から辿ることもできます。)

Bonne journée

ブルターニュ#5

「ミディ運河はたしかに良く知られています。誰が大西洋と地中海を運河でつないでいるなど想像できるでしょう。夏ともなれば、たくさんの船が行き交いますよ。でも、残念ながら、イル川にはミディ運河のような観光船が無いのです。夏のバカンスにでもミディ運河に行かれたほうが良いですね。」 
運河沿いを少し歩きたいだけだと伝えては見たが、船で楽しむ冷えたシャンパンの方がまともだと信じているに違いなかった。 
「えぇ、イル川沿いのハイキングも悪くありません。レンタルの自転車もありますよ。50km以上は楽しめます。どうしてもイル川がご希望なら、宿泊だけのボートを手配しましょう。シャンパンはついていませんが。でも、その前にひとつだけ確認させてください。ストラスブールではなく、ほんとうにブルターニュのイル川の話をされているのでしょうか。」

(ブルターニュ案内の5回目をアップしました。この続きはこちらから。あるいはメニューの「旅」から辿ることもできます。)