
「一度は見る価値がありますよ。ストーンヘンジばかりが巨石文明の痕跡ではありません。ソールズベリーだって同じケルト文化圏なのです。そもそもストーンヘンジの石柱もカルナックの石柱もメンヒルと言いますが、ブルトン語ですからね。」
いや、もう少し分かり易く言ってませんか、そう言いかけた時、彼は顔を上げてこう続けた。
「ああ、失礼。カルナックはなかなか興味深い所です。まずは、案内所の上から眺めてみてください。全体像は空から見るしかありません。展望台になっている少し高い建物がありますから、せめてそこから眺めてみてください。ほんとうに興味がありますか?だったらハイキングのつもりでぐるっと回る方が良いでしょう。でも、観光案内に書いてあったから見てみたいと言うだけの興味なら、展望台で十分です。近くの綺麗な海にでも行ったほうが良い。」
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カルナックと同じようなメンヒルが並ぶ場所は他にたくさんある。たくさんあるどころか、ブルターニュ一帯に点在している。もっと言えばヨーロッパ中に広がっている。だが、ここはどこよりも広い。全体像を見るのに最も簡単な方法は、グーグルマップかアップルマップを航空写真に切り替える事だ。無数のメンヒルが立ち並んでいる様子がよくわかる。

さて、そのメンヒルとはいったい何か。古いブルトン語で長い石と言う意味らしいが、実際のところ、後から付けられた名前であって、要は立てられた細長い石である。モノリスと言ったりもする。もはや有史以前のものだから、誰にもそれが何かは分からない。紀元前6000年頃からあるとも言われる石なのである。ある調査によればバスクやケルト民族によく見られるある染色体分布とメンヒルの分布は一致するそうだが、何の記録もないのだから仮説を立てても検証方法はあまりなさそうだ。ただ、このメンヒルはブルターニュ固有のものではなく、ヨーロッパ中に分布していることも事実であり、たまたまカルナックにはその最大級のものがあるだけである。メンヒルの数はおよそ3000だから、相当な規模である。

そのメンヒルが何かは置いておいて、それをどうやって楽しむかである。単に石が並んでいるだけで、何かの形をしているわけでもない。ただそれで十分なのである。見れば圧倒される。何でこんなにもの巨石を並べたのかと、呆れるほどのパワーを感じながら歩いて見て回れば良い。UFOの滑走路などと言う意味不明な事を想像する輩もいるらしいが、それでも何の不都合もない。
もし全部見て回ろうと思うなら、ハイキングの準備はしたほうが良い。数kmほどの距離ではあるが、一周すればそれなりの距離になるし、舗装されていない場所も多い。トレックシューズの方が安心である。しかも、実にその周辺にもいくつもの巨石が残されている。カルナックの巨石群は、その最大の部分だけを見ているのであって、これが巨石群の全てではないのである。少し移動するだけで別な巨石が無数にある。ドルメンもさほど遠くない。
はて、ドルメンについてはまだ触れていなかったか。ともかく何もかも見ようとは思わない方が良い。ドルメンについてはまた別途。

ところで、どうやって行くかだが、最寄りの大きな街はヴァンヌ(Vannes)である。ここからレンタカーということになるわけだが、もしキブロン(Quiberen)あたりのリゾートホテルにでも泊まるのなら、その道すがら寄ってみるというのも良い。周りは夏のリゾート地であって、7月から8月はマリンポーツに事欠かない地域である。暑い時期にはパリからたくさんの人がバカンスに訪れる。そんな場所だから、他のことをするついでにカルナックに半日当ててみるのもひとつの方法である。もっともキブロンあたりに泊まってヨットでも楽しもうなどという計画なら、カルナックに行くことなどすっかり忘れてしまうに違いない。やはり忘れないうちに早めに行くほうが良さそうである。
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ここはどこ?
カルナック
Carnac
行くべき?
絶対行く!・行く価値あり・時間が余ったらね
ただし、先史時代の遺跡に興味があれば。
URL
位置

不思議すぎます。メンヒルって何?ブルトン語って??
ただ並んでいるだけの石の数々。見るだけで圧倒される。不思議すぎてくらくらしそうです。一体どこからこの石たちがやってきたのか。おそらく多くの文献があるのでしょうが、なにも知らずただそこに立ってみたいです。「絶対に行きたい」に一票!
ブルターニュの標識はフランス語とブルトン語の両方で書かれていますし、時々ブルトン語を含むメールを受け取る事もあります。そのブルトン語を石柱を表す言葉として採用したんですね。まぁ、見たら唖然とします。ディープなブルターニュにようこそという感じです。
カルナックは世界遺産暫定リストに入っていたと思いますので、そのうち有名になるかも知れませんね。