Bonne journée, Cross Cultural

door

 時々、ドアの向こう側にある世界がこちら側とまるで違ったもののような気がして戸惑うことがある。大きな壁に穿たれた分厚い木材と赤錆びた鉄の枠で誰もを拒む冷たいドアのことではなく、ガラス越しにその向こうが見える薄っぺらな区切り記号でしかないありふれたドアが隔てる世界の話である。ドアノブに手をかけてみればもしかするとスーっと開くはずのそのドアが、ドアに手をかけることすら憚られるほどに二つの世界を分け隔てている。
 だからガラスに反射するその大して意味のない空間を写真に収めたくなるのだ。向こう側にあるものとこちら側にあるものは、同じように息をして、同じように笑い、同じように苦しんでいるに違いない。向こう側に見える冬の空気に燻んだ建物も、何も主張することなくじっとしている樹木も、そこを通り過ぎゆく人々も、名もなくそこにあって、なんらここと向こうに違いなどないものなのだ。
 ただドアを開けてみれば良い。違うと見えたものに差して違いはないはずだ。そう言い聞かせながら日々を過ごす。

フランスの知人のひとりが先日車を買い替えました。燃費の良いコンパクトな日本車で、最近はようやく安いから選ばれる車から良いから選ばれる車になってきたようです。もちろん、買えるならドイツ車だけれどコンパクトなフランス車が良いと考える人も多いので、まだまだ日本車は3年保証だからといった理由がついて回っているのは確かです。とは言え、この知人の買った車は評判も良く、これが欲しいと言って買われる車になったことは間違いありません。

でも、日本で売っているものとどこか違うような気がしてよく眺めさせてもらうと、外見もかなり違っていることがわかります。明らかにヨーロッパ仕様の方が伸びやかなデザインで、車重も概ね同じであろうにホイールすらも違っています。内装を見ても電動パーキングブレーキがヨーロッパ仕様にはついています。同じ車なのに、市場が違うだけでどうしてここまで変えるのかわかりませんが、おそらく日本向けは徹底的なコストダウンをしているのでしょう。同じ名前でも似て非なるものなんだろうなと感じます。

コロナの簡易検査キット(抗原定性検査)がスーパーで買えるようになって、たとえば高齢者と会う前に気になったら検査してみるのが当たり前となった今、とうとう検査キットの価格は1.2ユーロ以下(150円程度)まで下がってきました。日本では2000円以上と言われていますので安いものを探してみましたが、実はほぼ同じものでした。FFP2やN95のマスクもフランスでは1枚当たり20円程度で、日本とは10倍ほどの価格の差異があります。きっと医療関係の認証や物流などの背景があるのでしょう。

今や薄いドア1枚隔てただけの近い世界が、実は全然違うような気がしてくるのは、そんな似ているようでどこかが違う二つの世界が、ガラス越しにすぐそこにある身近な世界になったからなのかもしれません。

Bonne journée, Cross Cultural

Pausing

I’m not on vacation but a bit pausing.
The picture was taken several years ago at Ljubljana, Slovenia, not now. The weather was good, people were friendly and it allowed me to meet my old friend there. I talked a lot, indeed. After passing a bit uncertain years, I found myself not thinking of people. It might be a good to pause a bit.
I don’t intend to stop writing a blog. All I need to do is just to think this is not my obligation but my daily pleasure.

もちろんバカンス中ではありません。だいぶ前にスロベニアの首都のリュブリャナで撮った写真です。あの頃は人に会うことにも面白さを感じていたのに、すっかりそんな感覚を忘れているような気がします。ブログを止めるわけではありませんが、ひと呼吸必要なのかなと思わないでもありません。

Bonne journée, Cross Cultural

3ème…

ヨーロッパ諸国は新型コロナウイルスとの共存に舵を切ったということらしいが、だからと言って新規感染者が減ったというわけでもない。毎日100人にひとりが感染している状況に変わりはない。減少に転じたと言っても、英国はもう面倒になってちょっと調子が悪い程度では検査しなくなりつつあるのが実態のようだし、フランスはその充実した検査体制でも追いつかない水準で高止まりというのが正直なところだろう。2週ほど前は検査待ちが4日以上あったのが現在は2日程度になったらしいが、一体いつの検査をしているのか分からない。それでももはやマスクは必須ではない。フランス政府の唯一の頼りはワクチンブースターで入院を回避することにある。すでに3回目のワクチンを半数以上が完了しているのだから、そこそこ計画通りなのだろう。

あまり楽しい話ではないのでこれ以上は書かないが、共存するということは、経済をしっかり回して日常に戻すということである。フランスは、英国やデンマーク程には規制を撤廃していないが、それでも街には人が溢れ、1月中旬からのソルド(公的なセール=SOLDE)も2月8日までの日程で行われている。今年のソルドがどのくらい売れているのかまだ分からないが、バカンスに海外にも行けずお金が余っているそうなので、そこそこ売れているのではないかと想像している。

ソルドは、年に2回あるフランスのバーゲンセールであって、期間が決められているとか、セール専用品はだめとか、色々ルールがあって面白い。最初からソルドを意識して売ってそうな品物を見かけなくもないが、少なくともセール専用に安く作った製品ではなく、ソルド前から普通に売っていたものしか売ってはいけないことになっているから、ソルド中の品物の品質が悪いということはない。

そうなると、ソルドで買うタイミングが問題となる。ソルドの最初の週末は売れ筋商品がごっそり売れてしまうこともある。以前からショーウィンドウ越しにこれが欲しいなどと品定めしていても、値下げシールが貼られると同時に誰かに買われてしまう可能性だってあるはずだ。でも、最初の値下げは20%だったりもする。もしかしたらもう1週待てば30%オフになるかも知れない。いや、きっと色が売れ筋ではないから半額になるまで待とう。3回目の値下げ(3ème démarque)は今週だ。きっとそんな葛藤があるのだ。で、待てば大抵は物がなくなる。それが道理というものだ。あーあ、とため息をついてももう後の祭り。

ということで、写真の隅に見える “2ème démarque” の文字は、スポーツ用品ブランドのブティックの2回目の値下げである。きっとかなりお値打ち品があるに違いない。その隣、写真の中央はワクチンセンターの入口である。ここでは “3ème dose” で正しいかなどと聞いている。要は、3回目の注射かという質問である。注射より値下げの方が嬉しいが、こればかりは仕方ない。

Cross Cultural, Photo

Hiver, Winter, Fuyu

薄曇りを晴れと言い小雨が時々降る程度なら曇りと言う、そんなフランスの隅っこの街で過ごす冬はもう来ないだろうと思ってからまた1年。何故かと自問するよりも、やっぱりそうかと諦めるような気持ちで再び冬が過ぎていく。ここでの生活に憧れたわけでもこの街を観光したいわけでもなく、異文化が面白いという以外には、淡々と仕事をこなすために日々を過ごしている。今年の夏には再び横浜に引っ越そうと思いながら、どこか現実味がないのは仕事にもはや興味を失っているということなのだろう。区切りが付いたかなと、他人事のように自分に問いかける日々である。

上の写真は雨上がりの暗い川を面白がって古臭いレンズで撮ってみたものです。
朝のひとときだけはCOVID-19のおかげで案外静かな街が、雨でますます静かになったような気がしていますが、実際には午後にはワクチンパス反対のデモが大騒ぎを繰り返し、夜になれば犬を連れたホームレスやアルコールを抱えた浮浪者が大声を出すのが常になりました。
さすがに1日あたり50万人の新規感染者と聞くと、散歩したりしながらぼーっと過ごすのも難しく、カメラを持ち出す機会も減り、楽しい話題がないのが申し訳なく思っています。でも、動きも音もない写真はこんな時には面白いかもしれません。
タイトルのHiverはフランス語の冬です。漢字の冬が遠くならないように、日本の冬の味覚でも何か探そうかな。

Bonne journée, Cross Cultural

屋根のある場所

今日は少し楽しくない話題を含みます。読みたくなければ無視してください。

クリスマスが近づいてくると、なんだかソワソワとして落ち着かない気配が漂ってくる。おそらくは寒くなってきたという事なのだろう。屋根を持たない人にとっては厳しい季節がやってきた。ショッピングモールの地下駐車場は、駐車場の中こそ整備されているが、すぐ隣の搬入通路にはテントや毛布が散乱し、明らかに人の住む気配がしている。雨風が避けられる小さな空間は、貴重な場所となる。

あまり楽しい話ではないが、SDFとフランス語で言う家のない人は、非常に多い。フランスのSDFは100万人とも200万人とも言われ、政府は就農支援などの様々な方法で対応を続けている。人口6000万人の国である。2%以上もいると言う状況はかなり厳しいと言わざるをえない。とは言え、SDFの定義は日本とは少し違う。簡易施設などで過ごす明確な定住とは言えない人は全てSDFである。全く路上のみで過ごす人となると数十万人と言われている。日本は5千人程度なので、比較すればもちろんフランスの方がずっと多いのだが、単純に比較してはいけない。調査基準が違えば結果も異なる。

このSDFに対して、フランス社会は案外優しい。ごく普通の人がごく普通に挨拶をし、時に少なからず小銭を渡す。その優しさを逆手にとって、他人に小銭をせびって旅行する若者が増えたのが社会問題になったほどである。だから「あぁ、あの人、今日もここに来てるよ。元気でよかった。」と言う不思議な状況も生まれてくる。残念ながらマクロンが約束したように路上生活者が0ということにはなっていないが、それなりの支援が行われてはいる。

ただ、この状況である。COVID-19の新規感染者は増減を繰り返し、ロックダウンともなれば支援が届きにくくなる。上の写真はおそらくマルタ騎士団の支援活動だが、こうした支援がどうしても必要なのだろう。(GDPR法や肖像権の関係から少し見にくい写真となっています。ご容赦ください。)