Bonne journée, Photo

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201807-411

縁も何もなかったスロベニアの地で、もう長い付き合いとなるフランスの知人と食事をしながら、拙い英語で仕事のことや家族のことを話していると、ふと奇妙な感覚に襲われる。自分は何故そこにいて、目の前の知人は何故そこにいるのか。1万キロに少し足りないだけの遠い時間が、ある日突然、思いがけず目の前を流れ出す。

今頃は機上にあって、現実への時間を巻き戻すのに忙しいはず。もうしばらくは音信不通をご容赦願いたい。Monochrome Mondayは今週はお休み。

 

Bonne journée, Cross Cultural

Twin Lock

201807-211

マイレージの余りで旅行用ロックを頼んでおいた事をすっかり忘れ、思いがけず香港から届いた小さな荷物に、少しばかり旅行気分を味わう事となった。クッション材とともに入ったそれは、海外発送でお馴染みの黄色の封筒に入れられ、無造作に台形に切りとられたこれまた黄色いインヴォイスとともに送られてきたのだった。
その名をツインロックというらしい。小さなワイヤーロックが二つついているから「対をなす鍵」ということだろうが、それが本当に役に立つのかどうかは使って見なければわからないだろう。そして、しばらく使う予定はない。かつて、TGVを時々利用していた頃には、デッキの荷物置き場にスーツケースを放置するのにこんなものが欲しいと思ったものだが、最近は使うシーンがあまり思いつかない。基本は、片方のループを荷物のハンドルにつなぎ、もう一方をベンチなどにつなぐという代物である。ワイヤーの長さが短いから、ちょうど高さが合わないと利用はできないだろう。列車の荷物置き場ならなんとか使えそうだが、実際にやってみないとわからないというのが正直なところである。
ところで、こんな華奢なワイヤーで大丈夫なのかという疑問もあるだろうが、経験上問題ない。要は、カジュアルな窃盗を防ぐためだけのものである。カジュアルな窃盗というのも間抜けでおかしな表現だが、人間とは不思議な生き物で、盗めそうだから盗むのであって、盗むのがよほど大変なものを盗むのは、よほどのプロである。カジュアルに盗めなければ、短時間なら安全である。ああ、鍵がかかってないから持っていってしまえというのを避けられれば良い。隠し持ったニッパーでワイヤーを切るような輩はどだい避けられない。
なんだか窃盗の話で旅行気分を味わっているようだが、このツインロックから外国を感じるのはそれだけではない。そもそもワイヤーループが二つついているだけで、3通りの使い方があると強引に言い放つあたりも、ただ者ではない。つまり、二つのジッパーをロックしたり、ジッパーをハンドルに固定したりと、なかなか便利である。ジッパーを固定するのに使ったら、荷物を括り付けられないだろうと思うのだが、同時に使うなら二つ買えということだろう。なかなかである。
ハイライトは、番号の設定である。ロック用の番号はもちろん自由に設定できる。設定して試して見て焦ったのは、実はこの鍵が裏からも同じように見えるということである。つまり、123とセットすると、裏からは678と見えるのである。鍵が開かないと思ったら裏側だったというオチは、あまり良い気はしない。
まぁ、文句があるわけではない。余ったマイレージでちょっと楽しませてもらったということである。

さて、最後の写真は飛鳥II。先週世界一周から帰ってきたばかりだが、その姿ではない。残念ながら昨年の写真である。

201807-212

Bonne journée, Photo

虚ろな目

201807-111

肩から前に抱え込んだ通勤用のナイロンバッグが、
ウェブを虚ろに眺めながら空白の時間を埋めようと忙しく指を動かす右隣の腕をかすめ、
聞こえもしない小さな抗議を思い出したように身を縮めては、
ありもしないスマートフォンの向こう側に知らんぷりして逃げ帰る。
誰もが匿名である事を主張するIDは、
通りすぎるだけのダミー人形。
通勤電車の軋む金属音に顔をあげれば、
ガラスの向こう側に虚ろな目。
急ぎ目をそらす夜。

あまり支持されなかった前回を微修正してみたものの、むしろ中途半端に自分のスタイルになってしまったようで、少々歯がゆい。やっぱり文章は書き続けないと質が低下する。あまり得意でない写真でごまかす次第。その写真は本題とは無関係である。多分、恐らくは。

Bonne journée, Photo

夏汗

201806-411

どこにでもある角ばった自動販売機に
冷えることを諦めたような省エネ冷房と
ベタつく背中で対峙しながら、
曖昧に冷やされたボトルを探して
狭い通路に体を捻曲げ
お茶と炭酸ばかりの無言の主張にため息をつく。

とかく窮屈なのは、
伸びするのもままならない程に詰め込まれた空間のせいか、
それとも喉の渇きを癒すことも忘れたプラスチックのサンプルのせいか。
仕事の染み込んだ机を離れてゆっくりと飲み物を選ぶ時間は、遠い贅沢。
その赤い自動販売機の隙間で体を斜めにしながら
コインを入れようと手を伸ばし、
「アホはここに」と不愉快なメッセージに動きを止める。
小さな悪態をつき、
まもなく折れ曲がって見えなくなった「ス」の文字を見つけ、
「スマホはここに」だったと
再び冷たいLEDを見上げる。

いつもと違うスタイルで書こうとすれば、どうしてもぎこちなくなる。文章を書くことにも他と同じように癖があって、そのスタイルを変えようとしても簡単なことではない。ましてその文体に隠れる思想まで変えようとすれば、沈黙するか、投げ出すか、あるいはお茶を濁すか、そんなところが関の山である。パスティーシュの名手とはよほどの力量と見た。ここではそんな大それたことは考えていない。ただ、書き始めた時に、ちょっといつもと違うニュアンスを感じ、少しばかり変えたくなったのだ。