Cross Cultural, Photo

Floral Friday #194


 月明かりがまだ眩しい早朝の住宅街に、金木犀の甘く冷たい香りが滲み出していたのは、たった2週間前だった。鼻腔の奥に少し湿った空気とその日にしなければならない事への躊躇が詰まっているような気がして、なんだか落ち着かない朝だった。過ぎて仕舞えばなんでもないことなのに、予定がわかっているとどこかで人は躊躇するものなのだ。だから忙しさにかまけて気づかずにいた金木犀の花が唐突に咲いたのは、少し驚くと同時にどこか安堵することでもあった。誰かが歯車を回し続けているのか、時は進み、もう来ないと思っていた秋がやってきていた。

 

Bonne journée, Cross Cultural

(pas) Très sale 3 (mais honte)


Très saleの第3回です。極力不快な表現を使わないようにしていますが、今回もblogではあまり取り上げない内容となっています。今回は病院の話が中心です。汚い話はなく、どちらかといえば恥ずかしかった話となっています。不快感は人それぞれなので、多分次回は最終回になります。

 たとえ長年住んでいたとしても、生まれ育った国以外で病院に行くのは少し気が重い。まして海外旅行先ともなれば、相当ハードルが高いはずだ。どうやって痛みを伝えようなんていうのは序の口、入院なんて事になれば勝手も分からない。風邪薬ひとつ処方してもらうだけでも、その処方箋を持ってどこへ行けば良いのかも分からない。旅行者なら支払いも全額となる場合が普通だ。その国に住んでいても、医療用語は分からないかも知れない。フランスに20年住んでいる知人ですら、毎日行く物じゃないから、なかなか単語がわからないという。幸いにも出産と子育てという病気ではないことで多くの単語を覚えたそうだ。
 コロナの時は、知人の日本で発行されたワクチン証明書をフランス入国前にフランス版に切り替えるためファーマシーに行ったのだが、ここでは扱えなくなったから別なファーマシーに行ってねまでは日常会話なのに、そこから先のワクチンの話になると突然会話の難易度が上がって「そうだった」なんて独りごちた。
 ある日のこと、どうも手のひらに赤い部分が出来て時々出血するから病院の予約をしようとしたが、なかなか予約が空いていない。予約が原則のフランスの難しいところである。フランスに長く住む知人に相談したら、そんな時は救急医療(ユルジョンス)で大丈夫だと言う。「任せて」というので頼んだら、すぐに来いとの事だった。急いで救急医療を訪ねることとなった。結果としては何でもなかったのだが、その時は念のため検査したいからと手術になった。この話は面白いので別な機会があれば紹介したいが、今日の話題は手術前の準備の話である。
 受付をしてPCR検査も陰性なので、いよいよ手術となった。フランス語のボキャブラリも少ないので、なかなか指示されている事が分からなかったりする。
「じゃあ、薬品で全身を洗ってください。シャワーを浴びたらこの検査着に着替えて、今着ている服はこの袋に入れてくださいね。あとでロッカーに入れておきます。薬品は全部使い切ってください。」
そう言って、赤い消毒薬2本と検査着を渡された。検査着はどうやら使い捨てらしい。なんだか注文の多い料理店で騙されそうになったみたいな気分だったし、そもそも救急病院でシャワーを浴びるなんて想像していなかったから、もうなるようになれと言う気分だった。服を脱いで袋に放り込み、スポーツジムにでも行ったつもりでシャワーでさっぱりするまでは良かったのだが、消毒薬はヨード系の黄色味がかった赤い液体だし、匂いも当然病院のそれなので、リラックスできるようなシャワーではない。まあ、面白いからいいかと言う妙な割り切りが必要だった。
 体を拭いて不織布のショーツを履いてみたら案外サイズは合っていたのでラッキーだったが、ズボンの方はそうはいかなかった。フランスあるあるで、ウエストを締める紐がついていないのだ。製造ミスだろう。流石にスケスケのショーツ1枚でズボンを交換してくれと出ていけないので、紐のないズボンのウエストを手で押さえながらシャワーを出たら、すぐにあっちで待てと指示されてしまった。こんな時にフランス語が咄嗟に出ないのは、外国人の辛いところである。
「えーっと」
と言っている間にストレッチャーに乗せられ、麻酔室に運び込まれたのだった。まあ、寝ているからズボンがずり落ちることもないし何も問題ないのだが、やれやれである。
 さて、手術も終わり、右手に麻酔を施されたまま別な部屋に連れてこられたかと思ったら、ストレッチャーを降りて指示されたテーブル席に座れという。もう、右手は使えず首から吊られた状態である。うっかりストレッチャーを降りたらズボンがずり落ちた。
「あはは、パンタロンが落ちたわよ。」
看護婦は豪快に笑っていたが、こちらはそれどころではない。左手しか使えないのだ。しかも手先だけならまだしも、肩から下全体が動かない。なんとかズボンを上げて椅子に座り、指示された通り食事をして薬を飲み、ようやく着替えとなった。

(ここからは、人によっては不快と感じる表現や内容を含みます。)

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Floral Friday #193


 秋バラの季節だというのに、今年は何だか華やかさがない。暑すぎた夏のせいなのか、長すぎた夏のせいなのか、暑い季節が長かったからバラの管理が出来なかったからなのか、それとも夏には関係ないのか、とんとわからない。ひとつだけ言えるのは、ようやくバラを見ようという気になったということ。人間もくたびれている。