Cross Cultural, Photo

Floral Friday #229


 その表現が適切なのかどうかちっともわからないのだが、太陽の沸き立つプロミネンスが弾け飛ぶように見えた。水曜日の太陽は鼻にツンと来る金属臭を撒き散らしていたというのに、金曜日の太陽はどこか柔らかで、弾け飛ぶプロミネンスですら瑞々しく思えた。その太陽の表面には熱い息を吹き出す口が無数に開き、イソギンチャクのように通りかかる哀れな何かを待っているようにも見えた。焦げついた太陽の表面から伸びるピンクのプロミネンスには、よく見れば何かを掴み取るつるが延び、青臭い沼のような緑の宇宙でゆらゆらと揺れた。
 休日の朝、何かをするには汗臭く熱い空気がコンクリートのようにじっと漂っていた。

Bonne journée, Cross Cultural

paracétamol


 頭痛持ちである。若い頃から頭痛薬が手放せない。最初はアスピリンを常備薬にしていて、途中からイブプロフェンを使うようになった。最近はロキソプロフェンも普通に買えるようになったので、非アスピリン系の頭痛薬の歴史みたいな生活になってきた。
 もちろん、毎日飲んでいるわけではない。毎日頭痛がするわけでもないし、もし痛みを感じても、痛みがひどくなった時の具合で服用するか決めている。頭痛持ちの人には理解してもらえるかもしれないが、そうでないと危ない奴みたいである。親も同様だったので、体質の遺伝みたいなものかもしれない。
 写真の薬は、サノフィの痛み止めである。
 サノフィはフランスの大手薬品メーカーだからか日本だとあまり知られていないが、最近はアレグラの会社として知名度が上がっているようである。フランスのどこの薬局に行ってもこのドリプランという薬を売っているが、これもまたサノフィであり、主成分はアセトアミノフェンだ。つまり、子供でも飲めるかなり安全な痛み止めであり、コロナが猛威を振るった頃に売り切れになったカロナールと同様のものである。
 パッケージには、過剰摂取=危険と赤い文字で書いてあるが、実際のところ、フランス政府は、イブプロフェンは危険だからできるだけ摂取するな、アセトアミノフェンは普通に飲んでも大丈夫なんて言っている。だからなのか、フランス人はちょっと調子が悪いとこのドリプランを買って飲む。健康診断で行ったフランス人医師の部屋の壁にはポスターが貼ってあり、アセトアミノフェンは安全だから飲んでも良いが、痛みが続いたり、熱が下がらなかったりしたら、医者に診てもらえと書いてあったくらいである。連続して飲むことが問題ではなく、連続して飲まなかればならない時には、重大な問題があるはずだから医師に診てもらえということらしい。
 ほんとか?とも思うが、少なくともフランスではアセトアミノフェンは、かなり安全な薬とされていて、日常的に使って良いとされている。自分もイブプロフェンを飲み続けるのは躊躇われるため、痛みがひどくなければ、アセトアミノフェンにするようにしてきた。
 しかしである。よく見ると、500mgとなっている。日本のアセトアミノフェンは、300mgであり、痛みが酷ければ、6時間をおいてもう一度服用して良いとされている。300が2回なのだから600mgなわけで、フランスのこのドリプランは、1回で2回分に近い量を服用することになる。なんだか本当に大丈夫?とか思うのだが、きっと大丈夫なのである。何しろ、薬局に行ってドリプランがほしいと言うと、500か1000か?と聞かれるのである。500mgに決まっているだろうとか思うのだが、1000mgも普通に売られている。日本での3回分より多い。処方箋もいらない。日本なら簡単に買えそうな風邪薬に処方箋がいるフランスで、なぜか1000mgのアセトアミノフェンは、普通に買える。イブプロフェンを買おうとしたら、症状を根掘り葉掘り聞かれ、その上、飲み方を細かく指導されたというのに、アセトアミノフェンは顔パス。
 フランス旅行中に解熱剤が欲しくなったらこのドリプランを買うのが良い。薬局に行って、”doliprane 500″ と書いた紙を見せれば、きっとこれが出てくる。万が一、何か聞かれたら英語で押し通しても良いが、おそらくは言葉が通じないと分かればこれなら売ってくれる。きっと2ユーロそこそこ(400円以下)。それくらいお気楽な薬である。本当にそれで良いのか?という疑問はこの際捨てておく。
 なお、アセトアミノフェンは通じない。パラセタモル(paracétamol)と言う。これはイギリス英語でも同じなので、覚えておいて損はない。

Cross Cultural, Photo

Floral Friday #228


English text at bottom
 強烈な色が強い日差しの中で空気中に広がってくる。柔らかなはずの花弁は頑なに自己主張し、目の奥に紫が突き刺さる。
 そんな花壇の写真だったからボツにしていたのだが、捨てるには忍びないと持ち出した。数年前の写真なので記憶が曖昧だが、記録を見る限り、どうやら色の補正はしていない。夏至の頃は色まで眩しい。

Intense colors spread through the air in the strong sunlight. The petals, which should be soft, stubbornly assert themselves, and the purple pierces the back of my eyes.
I had scrapped this photo, but I couldn’t bear to throw it away, so I brought it out. The photo was taken a few years ago, so my memory is hazy, but looking at metadata of the photo, it seems that nothing were corrected.
Even the colors are dazzling around the summer solstice.

Cross Cultural, Photo

Floral Friday #227


 この写真はもちろん撮りたての現在の風景ではない。何年も前に撮影したのだが、撮影した季節・時期という点ではひと月ほど前の6月上旬で、春らしさが溢れる光に感じられる穏やかな朝に、名もない公園を歩いていて撮ったものだ。

 それにしても、この感じは6月上旬というより5月じゃないのか?と感じられたとしたら、案外それは正しい。フランス北西部だったので、日本よりも少し季節が遅い。5月から6月にかけて、フランス北西部の季節は、日本に一気に追い抜かれる。ゆっくりしか気温が上がらないのだ。そもそもバラだって、紫陽花だって、長い間咲いている花なのであって、日本のように二週間で終わったりしない。春が長いのだ。その代わり夏は短く、7月に入ってようやく夏になったなと思ったら、8月半ばにはもう秋だ。

 美しく花が咲き乱れる春が長いのが良いか、夏はやっぱりしっかり夏であってほしいと思うか、季節感は人それぞれで良い。でも、今年の夏は早すぎる?このままだと、6月〜10月が夏ってことになってしまう。

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Floral Friday #226


 日差しがあるとなんだか楽しい気分になるのは、もしかすると生命を感じるからかもなどと、大袈裟なことを考える。いや日差しがないとそもそも生きていけない生き物なのかもしれないと考え始めた時点で、すっかり梅雨にやられていると言うものだ。花が咲き乱れ、蝶が舞う公園の片隅で、キラキラと輝く空気を感じていたいのは、当たり前と言えば当たり前なのだろう。
 雨降りが続いたって大きな葉の下では雨が止むのを待つ昆虫もたくさんいるし、先日切ったクズの葉からうっかり落ちてきた黄金色の毛虫だって、大急ぎで別な葉の下に隠れたくらいで、たまたま晴れたら目につく場所に命が湧いてくるように見えるだけなのだ。つるに躓いた右足の真っ白な靴の下に、どれだけの生き物がいるかなどわかるはずもない。
 大体において、梅雨の中休みで真夏のような日が来たらホッとするのかと言えば、そんなことはない。蒸し暑くてたまらんと不平を漏らすのだ。そんなことも含めて梅雨が続く。