A Part of Wordless Wednesday
Author: tanu
Mostly Monochrome Monday #323
旅の記憶

何年かぶりに訪ねた北海道は、車を運転するにも前が見えないほどの豪雨で、昼時にもかかわらず休む事なく稲光が空を走り、幅の広い整備された幹線道路ですら川のように雨水が溜まっていた。それでも、なんでこんな時に来てしまったんだろうなんてネガティブに思う事もなく、降り頻る雨の隙間からただひたすら久しぶりの景色を眺めて頬を緩めていた。それほど前回の訪問からは時が経っていた。
おそらくは全てが新鮮に見えるだろうと分かっていた。札幌の時計台だって、観光案内などで何度も写真やビデオを見せられているから記憶がリフレッシュされているはずだが、思い出せるのはその建造物の一部であって、その向い側にあるビルなど全くイメージ出来なかった。そもそも前回はどこのホテルに泊まったんだったかも皆目思い出せない。ただ、前回が3月だったことだけは間違いない。誕生日だというのに何故か夕食はラーメンだったのだ。よせばいいのに、何処からか「すすきの」まで時間をかけて歩いて、ラーメンだけ食べて帰ったことだけは覚えている。ラーメンがあまり好きではないから普段食べた事もほとんどないにもかかわらずである。旅とはそんなものだ。
飽きずに何度か訪問している地域というのがあって、北海道は複数回旅行していても、仕事ということは一度もなく、いつもプライベートという珍しい旅先だ。とはいえ、先に書いた通り前回はずいぶんと前で、まだ何事にも血気盛んな若者だった頃だ。自分にも若い頃があったなんて普段はすっかり忘れているが、スキーと遊び仲間の結婚式ついでの旅行のついでだったのだから、間違いなく若かった。周りから、「また行くの?」なんて呆れられながら、貯金を切り崩し、重いスキー板を担いで羽田に向かったりしたのだった。
豪雨は全く治る気配が無かった。予約していたレンタカー店までは運よくバスで移動出来たが、車を借り出したところでその車のワイパーをフルスピードで動かしても前も後ろもよく見えないから、思うように先に進めない。「アンダーパス、冠水注意」の看板を横目で見ながらゆっくりと幹線道路に出て、一般道をノロノロと走り出す。その横を大型トレーラーが何事もなかったように追い抜いていけば、跳ね上げた雨水が視界を遮った。近くの道の駅にでも避難する方が良さそうなのは明らかだった。そうやってゆっくり北上していると、気づけば1時間ほど続いた激しい雨が、いつのまにか普通の見慣れた雨へと変わっていた。相変わらず雷鳴は響いていたし、空を見上げるでもなく稲光を常に感じてはいたが、それでもパッチワークのような畑が広がるのも見えてきた。
しばらくフランスのブルターニュ地方に住んでいたが、時々日本からブルターニュを訪問する人もいて、その感想のひとつが「北海道みたい」だった。確かに牧草地がどこまでもうねるように広がる風景や、春や夏になると遠くまで黄色く染まる菜の花やひまわりの景観は、北海道の郊外の風景に抱くイメージと似ていなくもなかった。見渡す限り続くブロッコリーの畑と収穫したブロッコリーを運ぶ巨大なトラクターは、長沼町あたりの景色とそっくりだ。少し違うのは、北海道の方がずっと近代的で、何もかもが碁盤の目のように整然としているあたりだろうか。そんなことを思い出せる程度には風景が見えるようになると、旅先にいるんだなという実感が湧いてくる。千歳に降り立って、すでに2時間が経過していた。いろいろ寄り道したいと思っていたが、ともかくホテルにたどり着いた方が良さそうだ。雨も上がって、高速道路を移動するのも良い頃合いとなった。まずは札幌をやり過ごして小樽に泊まることにしていたのだった。
(来週に続く)
Floral Friday #137

そろそろ花の季節も終わってきて、取り上げることもなかったこんな地味な写真も良いかなと選んでみた。
さほど遠くない場所に横浜市が管理する大きな花壇があって、春と秋に驚くほど美しく整備されるのだが、その花壇は春と秋の公開時期意外はクローズされている。きっと整備をしなおしている期間と公開する期間とに分けているのだろうけれど、なんだか少し残念な感覚がある。良いところばかり見せて、何もない時は隠しているみたいな、そんな感覚である。とやかくいうような話ではない。自分もしっかりその公開された時の美しい花壇を楽しんでいる。でも、クローズされるということは公園という訳ではないんだなというのが伝わってきて、少しだけ残念なのだ。この秋は、未だ見に行っていない。



