
無数の真っ赤に熟したヘビイチゴが広がる道端の草原に足を踏み入れ、そっと絡み合った細い緑の葉の中を覗きむと、小さく髪の毛のように細い脚があちこちで動いていた。何かを狙っているのか、獲物を捉える罠を作ろうとしているのか、緑褐色の蜘蛛がヘビイチゴの上でじっとしていた。その様子を眺めていたら、その奥に広がるドクダミの花の場所まで進む気にはなれなくなったのだった。そしてふと考えた。この人工皮革の白いスニーカーの白いソールの下に、どれだけの営みがあるのだろうと。
かつて沖縄のその先の離島の誰もいない浜辺で、珊瑚のかけらで出来た真っ白な砂と流れ着いた枯れ枝の間に無数の米粒のようなヤドカリを見つけ、ふと持ち上げた足の下からいくつものヤドカリが這い出してきたことを思い出した。アウターリーフの白波を遠く眺めながら、全く音のないその場所で、足元からは賑やかな声が聞こえたような気がしていた。
早々に引き上げた日常の世界では、鶯が最後の囀りをいつまでも続けていた。



