Cross Cultural, Photo

Floral Friday #220


 例年、ゴールデンウィークといえば横浜パレード(国際仮装行列が正式名称らしい)を見たり、山手を散歩したりと近所の華やかな場所を多少歩くことはあるが、それ以外は家でじっとしていることが多い。遠出をしても混んでいるばかりだし、ゆっくりする貴重な機会でもある。
 もちろん日本を離れていた頃はゴールデンウィークなんてものはないから、何かしたことはない。同じ時期、フランスの5/1はメーデーで何もかもクローズしているし、5/8も戦勝記念日(ヨーロッパにおける第二次世界大戦の終結日)で多少パン屋さんが開いているという程度で何もすることがない。じゃあ、何をしていたんだろうと写真を見返すと、散歩である。なんだ、何も変わってないじゃないか。
 まあ、多少の違いはある。横浜の街中を歩いていれば、美味しそうなカフェもあればイベントにぶつかることもある。大道芸に人だかりができていたかと思えば、ちょっと気になるブティックの前にいつもと違うディスプレイを発見したりもする。ところが、休日のフランスは超有名どころの観光地を除けば何もない。カフェもほぼ閉まっているし、人がいないから下手な音楽を奏でるストリートパフォーマーもいない。スーパーも閉まっているし、トイレすらない。無難なのは、人気の少ない午前中の公園を散歩する程度である。ラッキーなら春の花の香りを独占できるし、読書していても邪魔をする輩はいない。そんな状況だと、冒頭のような意味不明な写真も撮れるというものである。

Cross Cultural, Photo

Floral Friday #219


 4月からゴールデンウィークにかけての関東は、案外晴れない。日替わりで晴れと雨の天気が交互に来たりするが、日差しがあっても一日晴れるというものでもないし、晴れても乾いた青空があるわけでもない。それが季節の変わり目というものでもあるだろうが、ようやく日差しを浴びて外で活動できるようになったのに、ちょっと残念だったりする。
 そんな気分でいると、その束の間の光を捉えたくて、カメラを上に向けることも多くなる。木々の梢には緑の葉が出始め、花が咲き、思いの外強い光に目を細めるのは、いつものことである。その光溢れる空を見上げて、ようやく見ているものを写真で表現できたと思ったら、ベストショットと思ったハイキーな写真には、飛行機が写り込んでいたのだった。確かにそうだった。忘れていたわけではない。カメラを向けて何枚か写真を撮っていたら、ちょうど飛行機がそこに現れたのだ。面白がって、ドンピシャのタイミングで写真を撮ったのを思い出した。
 ところがである。分かっていて何枚か撮った筈なのに、思ったような露出になったのはその面白がって撮った1枚だった。それはそれで良いのだが、なんだか納得感がない。
 まあいいか。

Cross Cultural, Photo

Floral Friday #218


 春のぼんやりした空を眺めながら、頭の中では呪文を唱えていた。
「ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング。」
もちろん呪文などではない。会社名であることも明白だった。ただ、見ていた資料に書かれた長い長いカタカナに困惑していたのだ。ここに書くわけにいかないので省略しているが、この呪文の前にはもう少しカタカナがついていた。
 その呪文の意味には、1時間ほどしてふと気がついた。有限責任会社であると。つまり、
「ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(GmbH)」
というドイツ語を切れ目なしに書き下してあったのだった。通常はこの前についている会社名に「GmbH(ゲーエムベーハー)」をつけて呼んでいるから、気付かなかった。ドイツ語が分かる人ならGesellschaft mit beschränkter Haftungも分かるのだろうが、こちらはドイツ語では日常の挨拶もままならない程度なので、もはや呪文だった。
 ちなみにこれにふと気がついたのは、もうひとつの社名を見ていたからである。
「バイリシエ・モトーレンヴェルケ・アクチエンゲゼルシヤフト」
最後のアクチエンゲゼルシヤフトはAG(Aktiengesellschaft)、株式会社である。つまり、この会社は、Bayerische Motoren Werke株式会社、自動車会社のBMWである。
 あー、知らない言語はややこしい。

 少しは知っているフランス語だから分かりやすいかと言われると、もちろんそうでもない。フランス語であれば、株式会社はS.A.と言う。société anonyme(ソシエテ・アノニム)。正確には、公開有限責任会社に相当する。知られた大企業の多くには、後ろにこのエスアーがついている。例えば自動車のルノーはRenault S.A.、アレルギー鼻炎薬のアレグラで有名なサノフィは、sanofi s.a.である。
 あまり詳しく書いても面白くないのでこれくらいにしておくが、何かと眠くなる春の麗らかな気候の中で、呪文を唱えるのはどうもよろしくないことは確実である。

Bonne journée, Cross Cultural

Warm winter


(English text at bottom)

 1月上旬だというのに今日の横浜は17度ほどまで気温が上昇したようで、外を歩くのにも日差しの下ではコットンシャツだけでも十分な暖かさだった。春のような陽気に家庭菜園で作業する人や公園で遊ぶ子供たちも多く、すれ違う人々も皆コートを脱いで脇に抱えていたりした。
 寒い冬型になる前には低気圧が日本列島を通過していくわけだが、多分今日はだいぶ北を通ったのだろう。その低気圧に向かって南風が吹き込むから南関東には太平洋の暖かな空気が入り込んで気温が上がるのだとどこかで聞いた気がする。地球温暖化なのか、それとも毎年の恒例行事となったエルニーニョ現象の類いなのか、きっと誰にも分からないのではないかなどと、少々悲観的な見方をしてしまう。

 そんな暖かで日差しのある時には、室温も上がる。室温計は昼時には23度。午後には汗ばむほどになって、甘ったるいアイスコーヒーが飲みたくなった。
 コーヒーを飲む時はエスプレッソだろうがドリップだろうがいつもブラックで、その上コーヒーを飲んで眠くなるタイプだったからフランスでは変人扱いされた事もあったが、まれに甘ったるいアイスコーヒーが飲みたくなることもあるのである。つまりは、その甘ったるいコーヒーと普段飲むコーヒーは、自分の中で別物なのだ。
 ヨーロッパにはアイスコーヒーがないと書いているサイトもあるが、全くないわけでもない。確かにフランスのカフェには滅多に置いてないが、今時はスタバも進出しているし、スーパーに置いてあったりもする。ギリシャでは昔からフラッペというインスタントコーヒーを泡立てたアイスコーヒーがある。しかも名前はネスカフェだったりする。中身はフラペチーノみたいなものだが、氷が入っているとは限らない。ずっと庶民的な感覚の飲み物だ。
 あー飲みたい。

Even though it was early January, the temperature in Yokohama seemed to have risen to around 17 degrees Celsius today, and it was warm enough to walk outside in just a cotton shirt under the sunshine. There were many people working in their vegetable gardens and children playing in the park in a cheerful spring-like atmosphere, and everyone I passed took off their coats and carried them under their arms.

A low-pressure system passes over Japan before it becomes a typical winter atmospheric pressure distribution, but it probably passed quite north today. I think I heard somewhere that southerly winds blow into the low-pressure area, causing warm air from the Pacific Ocean to enter the southern Kanto region, causing temperatures to rise. I take a somewhat pessimistic view, thinking that no one will ever know whether it is global warming or a type of El Niño phenomenon that has become an annual event.

When it’s warm and sunny, the room temperature rises. The thermometer read 23 degrees at noon. By the afternoon, I was sweating so much that I wanted a sweet iced coffee.

When I have a coffee, whether it’s espresso or paper drip, it’s always coffee without sugar nor milk, and on top of that, I’m the type of person who gets sleepy after I drink coffee, so I was treated like a weirdo. It was when I lived in France. But on rare occasions, I find myself craving a sweet iced coffee. In other words, that sweet coffee and the coffee I usually drink are different things for me.

There are some websites that say there is no iced coffee in Europe, but that doesn’t mean there is no iced coffee at all. It’s true that they are rarely served in French cafes, but Starbucks has expanded into French market these days, and you can even find them in supermarkets.

In Greece, there has been an iced coffee called frappe for many years which is made by whipping instant coffee. Moreover, the name is maybe Nescafe. The filling is similar to a Frappuccino, but it doesn’t necessarily have ice in it. It has always been a soft-drink with a commoner feel.

Ah, I want it.

Cross Cultural

Pâque

15年ほど一緒に仕事をして来たフランスの知人によれば、多くのフランス人はもはやキリスト教など信じていないという事になる。ムスリムが増えたとかそういった事ではない。依然としてキリスト教徒が9割の国である。日曜礼拝どころか毎日カランカランと教会の鐘の音が響き渡る。それなのに、礼拝など行ったことがないのだそうだ。洗礼を受けただろうなんて言ってみようかとも思ったが、日本でも子供が生まれたらお宮参りしたりするが、毎日神社にお参りする人は多くないなと思い返した。その知人によれば、欧州の多くの国と同様、宗教はもはや習慣の類であって、真剣に神の存在を信じている訳ではないのだ。

それでも仕事で関連していたブルターニュはカトリックの強い地域である。日曜となれば教会にそこそこ人も集まる。あの教科書で習う宗教の自由を保証したナントの勅令は、プロテスタントを認める王令であってブルターニュとも関係が深いし、フランスの中では特に日曜日をお休みとするお店が多い地域でもある。小さな村であっても欠かさず毎日教会の鐘の音が響きわたる。それこそ1時間毎に。

そんなブルターニュでも、というよりキリスト教の根強いフランスであっても、この時期は鐘の音を聞かなくなる日が訪れる。復活祭(イースター)である。復活祭の前の木曜日の夜から教会の鐘は鳴らなくなる。鳴らしてはいけないとか、準備で忙しいとか、そんな理由ではない。そもそも鐘はそこにないのだ。いや、尖塔を見上げたらちゃんと鐘があったとか、そんなのは形だけだとか、今どき鐘はタイマーで鳴らしてるとか、そんな事は言ってはいけない。鐘はそこにない事になっている。鐘は皆、キリストの死を悼んでローマ方面に旅立ったのだ。鐘を鳴らす人ではない。鐘自体が旅立ってしまうのだ。

どんなふうにローマに飛んで行ったのかはよく分からない。羽が生えて飛んで行ったらしいが見た人はいない。バチカンでは教皇に祝福を受け、復活祭の日曜日に戻ってくる。そうでなければ困るのだ。何故なら、バチカンのお土産はチョコレートなのだから。祝福を受けた教会のそれぞれの鐘は、復活祭の日曜の朝、イタリア土産のチョコレートを持って復活を知らせにそれぞれの町に戻ってくる。戻ってくる途中でチョコレートはバラバラと落ちてしまうのだが、良い子たちは木々の間や茂みの中にそれを見つけ、復活祭の楽しいひと時を過ごすわけだ。無論、良い子でなければ見つからない。アメリカあたりだとチョコレートはイースターバニーが運んでくるらしいが、フランスはバチカンを訪問した教会の鐘たちのお土産というわけだ。そんなわけで、熱心なキリスト教徒にとってはもちろんクリスマスより重要な復活祭だが、子供達にとってもようやく春になって暖かくなったひとときを楽しく過ごす一年で一番重要なイベントでもある。もはやキリスト教を信奉していないなどと言いながらもすっかり生活に宗教が根付いているわけで、人の営みとはそういうものなのかなと思う。

そう言えば、日本にだって似たようなものがある。すっかり名前だけになってしまったが、10月を神無月というのは八百万の神々がみな出雲に行ってしまっているから神様の無い月なわけで、どこか似ているでは無いか。チョコレートこそお土産にもらえないが、ぜんざいは出雲発祥とのこと。神様の帰りを待ってもきっとお土産はないが、そこはそれ、今どきオンラインで買えば良いのだ。いや、10月まで待ってられないなら東京ディズニーリゾートでイースターを楽しめば、と思ったら、今年は40周年でイースターイベントはないそうな。まぁ、なんでもお遊びにしないほうが良いとは思うのだが。

ところで、昨年の復活祭(フランスではパクと言う)でふと疑問が湧いたことがある。いや待てよ、今年の復活祭はまだ金曜の夜だというのに教会の鐘がだいぶうるさいなと。気温が上がったので空気の入れ替えにと窓を開けたら、近所の教会の鐘の音が風に乗ってガンガン響いてくるのだった。そう言えば以前もなってたような。真相はわからないが、結局のところタイマーで自動で動いている教会の鐘は、復活祭の前であってもなり続けていたようだ。

まぁ、そんなものである。

今年の復活祭は、2023年4月9日。今年はフランスにいる予定はない上に、プロジェクトも区切りを迎えてここしばらくはフランス人と話す予定もないから様子もわからない。すっかりコロナの影響も無くなって、きっといつもの復活祭が戻って来たのだろうと想像している。