Art, Bonne journée

Bonne journée (5)

秋は行楽の季節である。夏のようなどこまでも明るくまぶしい季節ではないが、落ち着いたトーンの光にあふれている点では、夏以上に風景が眩しく見えることすらある。FMからは、音楽と共に楽しげなトークが聞こえてくるとなれば、急ぎすぎない日常が心地よく感じてくる。もちろん、三連休ともなれば、気が遠くなるような渋滞情報も聞こえてくるのだが。

10月の江ノ島周辺の海は、相変わらず夏のようにサーフボードとヨットでいっぱいだ。海岸で日焼けを楽しむ人は、真夏に比べればずっと少ないが、すぐ近くの葉山の海のような静かな海ではない。江ノ電のゆっくりと流れる車窓からは、夏と間違えてしまいそうな輝く海が見え隠れする。停車する駅から古い寺社に向かう人が散見されなければ、夏はもう終わることがないのだろうかとさえ思えてくる。それでも、もうじきこの最後の夏のかけらも影を潜め、初冬の心地よい寂しさがやって来る。

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Art, Cross Cultural

写真撮っても構いません

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ作「聖アンナと聖母子」は、ルーブル美術館に無数にある傑作のなかでは穴場である。展示室というよりは廊下に掲げられたその作品は、天を指し示す「洗礼者ヨハネ」と共に、静かに来場者を待つ。三角形に配された安定した構図と穏やかなトーンは、ゆっくりと眺めるのが一番あっている。未完とはいえ、ダ・ヴィンチが最後まで持っていた3枚のひとつである。完成度も高い。
巨大な作品が多いルーブル美術館では小ぶりな作品であるが、けして小さくはない。むしろ、目に付く作品である。しかし、ありがたいことに、ゆっくり眺められる程度に、その周りは混雑していない。足速に通り過ぎるひとがほとんどであって、せいぜいとなりあるヨハネと共に一瞥をくれて立ち去る程度である。なるべく空いているであろう平日の午前中を狙い、訪ねたら、絵を独占して飽きるまで眺めるというのが良い。時間が許されるパリ在住者が羨ましい。
その一方で、モナリザは、人と人との隙間からちらりと見えた知人を渋谷の雑踏のなかで捜すかのようである。ルーブルまで行って、見ないで帰るわけにもいかないだろうが、やっと見つけた知人は、ショーウィンドウのガラスの向こうにいて会話もできない。せめて写真だけでも撮って帰りたいところだが、人混みのなかではそれも難しい。ルーブルは、いたるところに記念写真のスポットがあるが、恐らくは、一番難しいのがモナリザであり、その次が、「サモトラケのニケ」やドラクロワの「民衆を導く自由の女神」だろうか。ともに高さが3mを超え、写真に収めるには少し離れなければならないからである。 Continue reading “写真撮っても構いません”