Art, Bonne journée

Bonne journée (5)

秋は行楽の季節である。夏のようなどこまでも明るくまぶしい季節ではないが、落ち着いたトーンの光にあふれている点では、夏以上に風景が眩しく見えることすらある。FMからは、音楽と共に楽しげなトークが聞こえてくるとなれば、急ぎすぎない日常が心地よく感じてくる。もちろん、三連休ともなれば、気が遠くなるような渋滞情報も聞こえてくるのだが。

10月の江ノ島周辺の海は、相変わらず夏のようにサーフボードとヨットでいっぱいだ。海岸で日焼けを楽しむ人は、真夏に比べればずっと少ないが、すぐ近くの葉山の海のような静かな海ではない。江ノ電のゆっくりと流れる車窓からは、夏と間違えてしまいそうな輝く海が見え隠れする。停車する駅から古い寺社に向かう人が散見されなければ、夏はもう終わることがないのだろうかとさえ思えてくる。それでも、もうじきこの最後の夏のかけらも影を潜め、初冬の心地よい寂しさがやって来る。

江ノ電で江の島方面からたどり着いた鎌倉小町通りは、行楽シーズン真っ只中の人混みである。そこかしこに「生しらす丼」の看板が下がり、土産物屋の前はひやかしと品定めの客が、互いに自分の陣地獲得に情熱を傾けている。情緒も何もないが、ある種のトラディショナルな観光地と思えば、それもまた賑いと言えなくもない。

とは云え、古都鎌倉に期待するのは、緑の山を背景に静寂が包む境内や黄色に輝く銀杏と瓦屋根のコントラストであったりもする。晴れた週末には望むべくもない。そんな時には、ひとつ裏路地に入り込むのが良い。ほんのわずか賑わう通りから逸れるだけで、静かさを取り戻すことができる。先日訪ねた鏑木清方美術館は、小さな建物ではあるが、たった200円で静寂と美人画を得ることができる。食事は洒落たカフェでクロワッサンサンドあたりではどうか。しらす丼が必要なければ、待つことも少ないようである。

コメントを残す (Leave a comment)

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s