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Salt farm

 何というか、要するに塩である。

 結晶学的には塩素とナトリウムが交互に規則正しく並ぶ面心立方格子という面白くも何ともない結晶構造を持ち、式量はおよそ58。電気的には絶縁体であって、見た目は無色透明な直方体となる。水溶性があって、水に溶ければ塩素イオンとナトリウムイオンが電導性を示すが、融点は意外に高く、およそ800度になる。地球上には海水及び岩塩として大量に存在するが、多くの生物にとって生命の維持に必須の物質であって、口に入れれば他にはない塩味を感じる。

 要するに塩化ナトリウムの結晶なのである。

 ただ、純度100%かどうかと言われれば、食用の塩はマグネシウムを多く含んでいる。カリウムやカルシウムも少なくはない。それどころか、おそらくは多くの不純物が含まれている。これらの塩化ナトリウム以外の成分が「まるやかな」塩を生む。

 物質の多くは結晶化する際に不純物を自ら排除する。大雑把に言えば、異なるイオンがあると規則正しく並びにくいため、不純なイオンは結晶に入り込みにくい。だからゆっくりと結晶化させて不純物濃度を下げるといったことも行われる。人間が手作業でやるとなると大変な労力を必要とする。海水が多ければ生産できるというものでもない。もちろん熱を加えて水溶液から水を飛ばすことで生産できるが、多くは太陽熱と風による蒸発を利用した天日塩である。海から少しずつ海水を取り入れ、徐々に浅くしながら海水濃度を上げる。やがて現れる小さな結晶を少しずつ陸にかきあげながら「乾いた」塩にしていく。雨が多く寒い地域では生産は容易ではない。暖かくて晴天率の高い地域が生産には適している。

 そうやって作る塩の北限と言われる場所のひとつが写真の「塩田」である。アジア出身の自分にはどう見ても水田なのだが、ここは紛れもなく海であり、遠くまで続く塩田の先には我々が普通知る海が広がっているはずである。

2 thoughts on “Salt farm”

    1. 日本にお住まいでしょうか。日本だと赤穂塩田が有名ですが、このフランスの塩田(ゲランドという場所です)とはだいぶ様子が違いますね。赤穂のほうがずっと工業的な印象を受けます。ここは一見すると水田に似ていますが、きめ細かに配置された水路によって塩分濃度を調整しているそうです。

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