Bonne journée, Photo

Diaphragm

201707-411

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海辺の街と言うには少しばかり寂しい住宅地の一角にあるアパートにひとり住んでいた頃は、どんなに淡い青が空と海を分けていても、どんなに曖昧な一筋の金色が昨日と今日を分けていても、それにレンズを向けてファインダーを覗くことなど考えもしなかった。朝の静まりかえった冷気を肺の奥まで吸い込みながら歩く砂浜の海藻も、早めに帰った夕暮れにぼんやり眺める遠い漁火も、それは自動販売機で買って飲む缶コーヒーとなにも変わらない日常だった。首にかけた古臭い傷だらけの一眼レフカメラの中で光を蓄える貴重なフィルムは、むしろ足元のアスファルトの隙間から勢いよく芽を出したネコジャラシの影を撮るためにあった。
それから長い時間が過ぎて、いつか海に向かって少しだけ絞りを開く事が多くなった。どこまでも向こう側に続く仔細な何かがほんの僅かぼんやりと写るように。

201707-412

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