Bonne journée, Cross Cultural, Photo

Out of habit

Interestingly, one of the most difficult advices from the goverment was ‘not to give a handshake’.

慣れとは不思議なもので、つい何年か前までは握手など滅多にしなかったはずなのに、急にするなと言われて手のやり場に困っていたりする。もちろん、大騒ぎのウィルスの話である。やれ、たくさん集まるなとか、距離は1メートル空けろとか、政府から色々とガイドラインが出て右往左往しているわけだが、案外一番難しかったのは握手をするなというものだった。

朝の挨拶でまずは躓く。朝に知り合いに会えば握手程度は最低ラインの当たり前なのであって、肘をぶつけろとか靴をぶつけろとか言われても、急にできるものでもない。結果としてぎこちなくあげた右手は、まさにスタートレックのバルカン人である。「長寿と繁栄を」なんてファンでなければ意味不明でしかない。ちょうど昨年からマクドナルドが展開している広告がバルカン人風なので、案外理解者は多いのかもしれないが、ともかくもバルカン人の真似をするのが政府の専門家とやらの意図ではない。

初めて会っても時には頬にキスする国で、右手が空中を泳ぐのは明らかに避けられず、ぎこちなく腕組みしたり少しだけ頷いてみたりしているのである。慣れとは恐ろしい。

最近は一眼レフが重いというつまらないが重要な理由で小さなミラーレスを持ち出すことが多いが、これもまた「慣れ」という名の呪縛がかかっていると思い知る。写真を撮るのにファインダを覗くのが当たり前だと思ってきたが、このミラーレスには覗きたくてもファインダーがない。最初はファインダがないと頭でわかっていたとしても、ある日どこかで意味もなく液晶を鼻につけるという不思議な動作をおこなって、バツ悪く周囲を見回すことになる。

どうということはない。人の行動には慣性が働くのである。急には曲がれない。それでも人はなんとかしようとする。だから少々疲れるのだ。そういうものである。