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Floral Friday #218


 春のぼんやりした空を眺めながら、頭の中では呪文を唱えていた。
「ゲゼルシャフトミットベシュレンクテルハフツング。」
もちろん呪文などではない。会社名であることも明白だった。ただ、見ていた資料に書かれた長い長いカタカナに困惑していたのだ。ここに書くわけにいかないので省略しているが、この呪文の前にはもう少しカタカナがついていた。
 その呪文の意味には、1時間ほどしてふと気がついた。有限責任会社であると。つまり、
「ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(GmbH)」
というドイツ語を切れ目なしに書き下してあったのだった。通常はこの前についている会社名に「GmbH(ゲーエムベーハー)」をつけて呼んでいるから、気付かなかった。ドイツ語が分かる人ならGesellschaft mit beschränkter Haftungも分かるのだろうが、こちらはドイツ語では日常の挨拶もままならない程度なので、もはや呪文だった。
 ちなみにこれにふと気がついたのは、もうひとつの社名を見ていたからである。
「バイリシエ・モトーレンヴェルケ・アクチエンゲゼルシヤフト」
最後のアクチエンゲゼルシヤフトはAG(Aktiengesellschaft)、株式会社である。つまり、この会社は、Bayerische Motoren Werke株式会社、自動車会社のBMWである。
 あー、知らない言語はややこしい。

 少しは知っているフランス語だから分かりやすいかと言われると、もちろんそうでもない。フランス語であれば、株式会社はS.A.と言う。société anonyme(ソシエテ・アノニム)。正確には、公開有限責任会社に相当する。知られた大企業の多くには、後ろにこのエスアーがついている。例えば自動車のルノーはRenault S.A.、アレルギー鼻炎薬のアレグラで有名なサノフィは、sanofi s.a.である。
 あまり詳しく書いても面白くないのでこれくらいにしておくが、何かと眠くなる春の麗らかな気候の中で、呪文を唱えるのはどうもよろしくないことは確実である。