Bonne journée, Photo

Autumn – automne – aki

 ここ何年もこんなおかしな天気はなかったと聞くのは、これでもう何回目だろうと思う。

 引越してきて2週間降り続いた雨にもう雨が止むことはないのだろうと諦めた頃、
「ここの天気はこんなものだよ。でもあとひと月もすれば晴れてくる。」
と誰でも当たりそうな天気予報で言い訳していた知人は、それから半年も後になって、
「今年の天気は異常だった。こんなに降った年はない。」
と心配顔で話していたし、昨日は、
「こんなに暑さが続いたことはない。」
と別な知人がスクリーンの向こうで笑っていた。「お天気」という誰もが気にはするが実際にはさほど関心などない事柄に右往左往しながら、いつでも特別な日がやってきたような気がしているのが日常というものなのだろう。

 そんなわけで、こんなに晴れが続いたことはなかったブルターニュの春の後で、いつもの涼しく短い夏がやってきて、やがてこんなに暑さが続いたことがなかった夏が終わろうとしているのである。どこの家にも冷房などあるはずもなく、ただ窓を閉め切ってやり過ごすしかない暑さに困りかけた頃、突然夏は終わりを告げる。寒気にぶつかった地上の空気が朝から雷雲を作り、カラカラだった地面が雨に光り、気づけば9時には夕焼け空が石造りの建物を赤く染める。

 茶色になり始めた木々は、着々と準備を進めていたらしい。小さな秋を探す必要などない。気付いていなかっただけで、すでにそこかしこに秋はある。

 Autumnの最後の’n’は発音しませんよなどと注意されながら、スペルが分からなくなるからというつまらない理由で最後の’n’を心の奥で発音していた中学英語はいったいいつの事だったか。気がつけば成長しない自分が、フランス語のautomneの’m’は発音しませんよと心の奥で言い聞かせている。