クロワッサンは焼きたてでなければならない。パン屋で茶色の紙で無造作に包まれたそれを受け取った瞬間から、包み紙を通して感じるほのかな温かさとふわりとした触感に、早く喰らい付かなければならないという罪悪感のようなものすら感じ始める。思わずゴソゴソと包みを開き、あたりをうかがいながら大きな口を開けて嚙みつけば、口中に広がるサクサクとした甘みとバターの香りの組み合わせが幸せを呼び起こす。脂っぽいパン生地のかけらが口の周りに着こうが、周りに散らばろうが、味わいに比べれば些細なことである。朝7:30の開店と同時にクロワッサンを買うということは、そういうことだろう。フランス語でクロワッサンはパンではないとか、ナポレオンがどうしたとか、もはやどうでも良い。半日経っても美味しいクロワッサンというのもあるだろうが、それでも焼きたてでなければならないのだ。
一方、ベーグルは焼きたてを楽しむことが本筋ではない。半分にスライスして、たっぷりのクリームチーズとハムを挿み、時にはレタスなどの野菜類も加えて、美味しく健康的にいただくべきものである。時にパンが冷たく冷えきっていても、それ自体は重大な問題ではない。ビタミンすら感じながら、もっちりとした歯応えとフレッシュな空気感こそ似つかわしい。
いきなりパンの話で始めたのには理由がある。個人的な感覚だと言われればその通りだが、いつもの街で少しばかり妙な感覚をパン屋の前で感じたからである。
先日、混雑した電車から降りてようやく一息ついたところで、その妙なものに気がついた。吊り革を掴む腕が揺れるたびに関節に感じる湿気にうんざりしていた後だけに、いっそうすっきりしない感覚が増したのかもしれない。駅のパン屋に並ぶ朝の美味しそうなパンとパンの間に、奇妙なポップが置かれていた。
「クロワッサン・ベーグル」
対極にありそうなこのふたつのパンが、何故ひとつになったというのか。しばらくは、何が書いてあるのか理解していない自分を疑わざるをえなかった。そして、思い至ったのだ。つまりは、「餅茶漬け」とか「ブレッド・アンド・ライス」とか、兎も角も似たようなものを強引に組み合わせたのだろうと。確かに、随分と前のことだが「おにぎりパン」なるものが売っていて、血気盛んなチャレンジ精神でそれを買ってみたことがある。それはそれで面白いし、不味いというわけでもなかったが、正直、面白さとカロリーがその主たる中身だったように記憶している。誰が考えたのか知らないが、できれば美味しいものはそのまま頂きたいものである。
ところで実は、もうひとつ奇妙なものがある。なんと「ミートドリンク」である。とはいえ、こちらは見間違い。自分が勝手に間違えただけなのだが、朝から多少胃に違和感を覚えたことだけは告白しておきたい。
ところで、冒頭の写真は本題とは全く関係ない。本文でいつもと違った写真を使ったので、少しばかり悩んだような写真を持ってきてみただけである。
よくある話ですけど、英語圏では日本で言う「クロワッサン」って発音がまったく通じないですよね^^;
クロワッサンもベーグルも大好きですがそのクロワッサン・ベーグルが気になりますw
クロワッサン・ベーグルですが、記事に書いた手前、じっくりと観察してみようと思って店を覗き込んだら、なんともうありませんでした。殺気を感じたのか、売れなかったのか…
そこで検索してみたら、2014年頃にたくさん出てますね。クロワッサン好きとしては少々疑問。