Cross Cultural, Photo

Floral Friday #180


 先日フランス人の知人と話をたら、週末からバカンスなんだと嬉しそうにしていた。もはや義務なんじゃないかと思うくらい、誰も彼もが家を空けて、どこかにいなくなってしまう。やれ近場の貸別荘だ、今年はピレネーでキャンプのつもり、やっぱりイタリアでしょと、それぞれが車に大量の荷物を詰め込み、あるいはスーツケースをパンパンにして大忙しと言うものだ。

大抵は二週か三週は出かけているから仕事は大変。今年は7月の上旬から取るから8月の仕事は任せておけなんて会話しても、そもそも夏に真面目に仕事をするわけがない。8月の終わりに報告しあって、勝った負けたと意味不明な会話が続くのだ。「今年は南仏で過ごす奴が多かったが、あっちは曇ったり降ったりで海は楽しくなかったらしい。その点、地元の海は30度もあって泳ぐのには最高だった。」なんて報告されたことも一度や二度ではない。

 フランス在住の日本人だって例外ではない。夏休みを使って日本に里帰りする人も多いし、夏の期間は飛行機代が高いからクリスマス休暇を長くとるなんて考えの人もいる。夏休み期間を使って日本から遊びに来る人がいれば、一緒に近場の観光地巡りなんてこともあるだろう。

 そんなわけで、7月の半ばから8月の下旬までは、誰かしら人がいない。特に7月下旬から8月上旬はガランとしてしまう。スーパーはかろうじて開いてはいるが、行きつけのパン屋もレストランもみんな休みだから、街は死んだように静まり返る。そんな話をしていたら、日本の同僚が急に疑問を感じたらしい。
「じゃあ、オリンピックはどうなるの?盛り上がってないの?」
フランス人だってオリンピックに興味がないわけではないが、そもそも外国選手を知らないし、パリ以外の人には他人事。日本みたいにTV放送が埋め尽くされることはない。そのパリも、人がバカンスでパリを離れている期間だからこそパリで開催できるわけで、パリっ子が熱くなっているわけではないらしい。
「ハンドボールくらいは見るかな。」
そんなことよりバカンス先でのレストランを気にする人たちである。

 バカンスから帰って来れば、新学期で忙しい秋。8月の半ばには冷たい風が吹き始め、9月には紅葉が始まる地域には、夏は7月下旬の今しかないのだ。オリンピックなんて見てる場合じゃない。