
Le génie, c’est l’erreur dans le système.
Paul Klee
天才とは、システムのエラーである。
パウル・クレー
ソフトウェア技術者が聞いたら勘違いして大喜びしそうなこの言葉は、残念なことにコンピュータとはまったく関係ない。パウル・クレーが亡くなったのは1940年の6月の事である。ソフトウェアの原型を作ったアラン・チューリングが若くして亡くなったのは1954年だから、関係ないと断言できる。ソフトウェアがシステムレベルとなるのはずっと後の事だ。
この言葉がどんな文脈で発せられたのかは把握していない。原典にもあたれていない。だから本当にパウル・クレーの言葉かどうかも分からない。きっとあちこちに書いてあるからパウル・クレーの言葉なんだろうという程度である。だから誤解している可能性がある事を承知で書くが、ここでいう意味は日本語にはなかなか訳しにくい「系」なのだろうと思う。
平たく言えば、「系」とは様々なものの組み合わせで出来ている仕組みのようなものだ。だから、社会そのものでもいいしスーパーマーケットの物流網を想像したって良い。その仕組みにエラーがあった時にそれを天才だと言っているのかなと思う。まずこれをやって、次にこれをやって、そうしたら誰かにその結果を渡して、なんていう手順と実際に行う仕組みは、物事をスムーズに行うための仕組みである。それがあるから失敗なく短時間で仕事が終えられる。それなのに、こんなことやめてこっちの方を先にやったら?などと一日がかりの仕事を30分で終えてしまうようなやつは、仕組みを壊すエラーであると同時に天才というものだ。
そんな事を言っているのかどうか知らないが、あの他の誰にも引けないような線で天使を描いたパウル・クレーがどんなことを考えてこれを言ったのか興味深い。忘れっぽい天使は、誰に才能を与えたのかすら覚えていないのかも知れないが、その感性に満ちた才能とシステム・エラーは関連しているのだろう。
Paul Kleeの日本語表記は、ほぼパウル・クレーに統一されているようですので、これに従いました。