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Floral Friday #165


 花曇りというよりは雨を予感する薄暗い朝に見る白いポピーの花弁は、絹のように透明感にあふれ、ドレープ感のあるそれに不用意に触れれば、時に風に浮かぶように散り落ちる。そんな様子を見ていたら、写真に収めたくなるというものである。

 先日のこと、あることがきっかけで目の検査をしたのだが、あの眼科で目を覗き込まれるのがなんとなく気恥ずかしい。医師だって他人の瞳を好き好んで覗き込んでいるわけでもないわけだが、瞳を覗き込むことに何かしら妙な先入観を持っているのだろう。どうにも変な気分である。
 しっかり検査するということで、瞳孔を開く薬を使ったから、病院からの帰り道は少々眩しくて歩きにくいこととなった。とは言っても雨が時々降っているような暗い日だったから、晴れた日に比べればずっと楽だったはずだ。外を歩いていても多少見にくい以外は特段の問題もない。上のようなポピーを眺める気にはならなかったが、街を歩く事にはさして違和感もなかった。
 ところが、大きな交差点を越えようとして急に問題があると気がついた。横断歩道の白線が眩しくて見ていられないのだ。あの白線は夜でも見えやすいようにしているわけで、なるほど反射率が高い。薄目にしてなんとか横断歩道を渡ったが、白線とアスファルトの間にパープルフリンジが見えた気がした。
 もちろんそんな筈はない。パープルフリンジは例えば高輝度ピクセルの電荷の漏れと色収差などによるものであって、どうやっても人間の目には発生しない。長年デジタル画像処理を専門とする輩と付き合ってきたから職業病みたいなものである。その昔、鮮やかなオレンジから深い紺色に変わる美しい夕焼けを見て「階調が出てないな」と言ったあたりですでにちょっとおかしい。気をつけなければ。
 とは書いてみたが、上のポピーの花弁の縁は、ほんのわずかに青いような。

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