
今週は少しスタイルを変えて、ニュース記事に短いコメントをしています。
災害のリスクがあっても職場への出勤が本当に必要か。
時間や勤務場所を変えることはできないのか。従業員の命を守ることは企業を守ること。
会社の経営者や上司の方は、改めて考えてほしいと思います。そして私たちの意識を変える必要もあります。危険な状況で仕事をしなくてすむ人を増やすには、災害時に一定程度、社会サービスが止まることを受け入れられるか、私たち自身も問われています。
「それでも出勤しなきゃダメですか?台風・大雨…出社の判断は」(NHK)
このような言葉でこのNHKの記事は結ばれています。記事のカテゴリーは気象です。
ようやくこんな記事がNHKにまで出てきたことに安堵した。
人の命に関わるエッセンシャルワーカーが、台風でも出勤せざるを得ない場合があるのは理解する。そのような場合の論点は、どうやって安全を確保するかである。
一方で、物流が止まると大変だとか、コンビニは24時間の生活を支えているとか、そんな風に考える必要はない。もちろん困る人もいるだろうが、その困る人のためにトラックドライバーの命を犠牲にして良いわけではない。ほとんど事故などないという反論もあるが、まったくの0ではないのだから、それは誰かは犠牲になっても良いと言っているのと同じである。
会社に対する忠誠心が試されるという話もあるそうだ。「明日は台風による交通機関の乱れが予想されます。出社時は十分に注意してください」なんて通達が出たりする。要は、「よほどのことがない限り工夫して出社せよ。安全喚起したのだから第一義的責任は従業員にあるからね。」と聞こえる文書である。会社の安全配慮義務はどこにいったのか。マスク着用と言ったコロナ下での各自のふるまいが要請でしかなかったのと同じ構図にも見える。そうしたどこか論理性を欠く習慣を止める素地はそろそろ出来てきたのではないか。
これがフランスだと、無理に出社して怪我したら会社の損失だし、家族が気になって仕事にならないだろうから休んでくれというのが普通だ。会社側の要請だから当然有給のみなし勤務としての休暇である。そう言うと従業員側の視点での会話になるが、要は、会社の臨時休業なのだから給与には無関係という事になる。ある日本企業で聞いた話では、働かなかったのだから給与から引かれるという妙な論理があるらしいが、欧州なら経営者の犯罪にならないかという議論の対象だろう。
大雪で道路が通れないなら来てくれるなというのが当たり前であるべきだ。災害のリスクがあるならテレワークにするなり、臨時休業にするなりして命を守り、もし不便な事があっても受け入れる体制を準備する社会に移行する時が来たのだ。
こちらは朝日新聞の記事です。
定められた年次有給休暇の日数に対し、実際に休んだ「取得率」がよく話題になります。日本は50%程度で世界的に低いと言われています。しかしフランスでは取得率という考えがそもそもありません。有休は取るのがあたりまえで、取得率は100%だからです。
「なぜ短い日本の夏休み 休めないのは「恥」のバカンス大国との違いは」(朝日新聞)
ここだけ切り取ると誤解を招くかもしれませんが、額面通り受け取って構いません。
日本に戻って新しい仕事を始めたら、同僚が揃って「フランスはいいなぁ、夏休みを三週間も取るんでしょう。働かないのに給料もらえるの?」と言う。
このフランス人からすると不思議な疑問は、フランスはカレンダー通りに働く国で、国が定める休日は日本よりずっと少ないと言う前提を考慮しない事からくる。日本の大手企業は独自のお盆休みや年末年始休みを持っている場合も多いし、公務員でも仕事納めや仕事始めがあって、フランスよりも10日から15日は多く休んでいる。フランス人が10日から15日程度の有給休暇をとった状況が日本の皆勤に近い。つまり、フランス人から見れば、普段頑張って働いているのだから、バカンスくらい欲しいとも言える。
有給休暇は会社が従業員に与えた休みであって、当然その休みを取るべき日に仕事をする(有給休暇を100%取得しない)なら、会社は割り増し給与を払わなければならない。従業員が休暇を取らないなら会社のペナルティである。フランスの有給休暇付与日数は一般的に25日であるが、ほぼ誰もがこの25日を休暇に割り当てる。勤務形態にもよるが、この25日のうちの15日を夏のバカンスに当てれば、週休5日として三週間の連続休暇となる。残りの二週はクリスマスやイースター休暇に使う。そのかわり、フランス人は案外何でもない休暇は取らずに働く人が多い。バカンスのために必死で働くなんて冗談で言うほどである。
そもそも上級管理職ほどしっかりバカンスをとるのもフランスらしい。休めなかったなんて言おうものなら、「相当つらい個人的な事情があったのね」と同情されるか、「能力ないやつ」と陰で言われるだけである。ここで、「私のサインが必要な重要な取引があって」なんて言ったらもう従業員はついてこない。そんな重要な事なら調整できる体制を整えて然るべきで、それも出来ないなら上司の能力がないか、会社が倒産寸前だと言っているようなものである。
そろそろ、内向きの会議のような生産性のない仕事をやめ、しっかり休んだ自慢をしても良いのではないか。