電車の中でぼんやりしていたり、道を歩いていて前を歩く集団があまりにゆっくりであったりすると、どうしても耳に入ってしまう会話がある。聞いては失礼だと思っても、聞き逃したいない話もあれば、聞きたくないのに聞こえてしまう話もある。
電車の中で聞こえて来たのは、おそらく親しい職場の同僚どうしのたわいもない話である。しばらくして、当たり障りのない話が次第に具体的になってきた。聞き耳をたてるのも気が引けるが、話しているのは直ぐ後ろである。
【A】最近うちの子、すごく表情が出てきた。
【B】あら、かわいいわね。
【A】うん。なんだか、もう直ぐしゃべりそうなくらい。
【B】あはは。
【A】スポンジケーキとか大好きで、良く食べるの。
【B】そうなんだ。
【A】そうそう。この間はケーキ食べてたら掠め取られた。海苔とかもたべるのよ。
【B】あなたと似てるわね。じゃあ、スパゲッティーとか、チーズとか…
【A】えっ?チーズ?私が?
【B】猫よ。
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