Bonne journée

土の感触

あるblogで土壌について書かれた本を紹介しているのを見て、ふと、最近は土に触れていないなと思い出した。まるで触っていないわけではない。先月もシクラメンを慌てて植え替えたし、少しずつ冬らしさを感じるようになってきた森を散策して、小学生のようにドングリを拾ってみることもある。だが、だからといって地面に直に触れる感覚はない。

かつて住んでいた北関東のある街で、いつだったか少し深く地面を掘ったことがある。全く理由は思い出せないが、大きめの木を植え替えるのでも手伝ったのか、あるいは別な理由だったのか、その掘った穴はそれなりに深いものだった。黒々としてずっしりと重い湿った土は、スコップに片足をかけてもなかなかそれを沈める事が出来ないほどに硬く締まっていた。それでも何度も掘り続けるうちに、やがて大地に穴が穿たれ、人が入れるほどになり、不意にその黄色の地層は現れた。その黄色はくっきりと黄色であって、それまでの黒い土とは明らかに違っていた。いわゆる関東ローム層である。

普通の黒土を少しくらい掘った程度では見ることのない土は、掘り続けてみて初めて出会う黄色であって、いささか驚きを感じるほどに異なった風合いである。湿っていれば時に鮮やかな黄色となり、乾けば軽石のようでもある。火山が作り出したその層は、だが、普段に見ることはない。

コンクリートで固められた街への嫌悪をステレオタイプに吐き捨てることは難しくない。時に大地に触れたいと思うこと自体は悪い感覚でもない。その一方で、土壌をどうこう思う軽々しさには、どこかで安易な思考停止がつきまとう。大地に触れる感覚がないのは、都会の生活からはもはや逃れられない現実と裏腹の関係にあるのだろう。都会とはそんなものなのだ。

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