Cross Cultural

誰か落としませんでしたか

20130210-000

ずいぶんと昔のことだが、チューリッヒから中東経由で東京に戻ったことがある。いわゆる「南回り」である。多少時間がかかるとはいっても直行便の10倍かかるというわけでもない。途中のトランジットを楽しんだ上に安いのだから、特に急ぐ旅でなければ、選択肢にいれても良い。
その時のスチュワーデスは、英語、フランス語、韓国語、日本語の4か国語を話したように記憶している。韓国語もフランス語もわからない私は、もっぱら通じない英語で苦労をしたことが妙に印象に残っている。隣の乗客は、アメリカ在住の南イエメン人だった。確か、南部の何処かの州だったと思うが、そこからニューヨーク経由でヨーロッパの何処かに飛んで、さらにチューリッヒに飛び、いよいよ中東まで来たところだとしみじみと語っていた。長い道程であったが、実家までもう少しのところまで来たと。地球儀を眺めれば確かにもうすぐだが、これからもう一本乗り継ぐとかで、相当疲れた様子だった。

正確には、南イエメンという国は、現在存在しない。20年ほど前にもうひとつのイエメンと統一され、最終的にイエメン共和国となった。統一後も内戦があったと聞く。今はどんな国となっているのか、接点もなくまったく知らないが、隣り合わせたイエメン人がとても嬉しそうにしていたところをみると、きっと素晴らしい故郷なのだろう。もちろん、何もかもがバラ色などという事はないのが常である。彼は、搭乗時に預けた乾電池のことをしきりに気にしていた。手にいれにくいのだという。時代も代わり、今はもうそんなこともないのかもしれないが、少なくとも当時は電池を無くしたくないということだった。 Continue reading “誰か落としませんでしたか”