Bonne journée

YOKOHAMA


 住む街や住む国に愛着を感じるタイプの人間ではない。そう思っていた。生まれ故郷の街が正直に言えば好きではないというのが原因かもしれない。その生まれた街には、もう、子供の頃に遊んだ川も森もない。若い頃に住んでいた街も、嫌いなわけではない。でも、また住みたいとは思わない。生活するには気候が合わなかったと言うのが理由である。長い間住んでいる横浜に愛着があるかと問われれば、よくわからない。税金は高いし、色々と都会の不便さがある。フランスの片田舎に住んでいたこともある。その街に戻りたいかと言えば、強い希望はない。言葉の問題もあるが、移民には優しい街であっても、何もかもが快適というわけにはいかない。

 それでもふと思う。何のストレスもない理想の街などありえないし、色々課題もあるから面白いのだと。そう思い始めて、横浜に愛着を持つようになった。足りない部分は足りている場所に行けば良い。車で1時間も走れば雄大な自然だってある。コンクリートと鉄の街でも、美しい。

I’m not the type of person to feel attached to the city or country I live in. Or so I thought. To be honest, maybe it’s because I don’t like the city where I was born. The river and forests where I played as a child are no longer there. But then I suddenly think, there’s no such thing as an ideal city with no stress at all, and that it’s the many challenges that make it interesting. That’s when I started to think that, and I began to feel attached to Yokohama. If there’s something missing, you just need to go to a place that has it. There’s also magnificent nature just an hour’s drive away. Even a city of concrete and steel can be beautiful.

Bonne journée

MORT


 法の精神なんて堅苦しいことを言うと、この先読んでもらえないかもしれない。そんな大袈裟な話ではないのだが、この言葉が便利だからちょっと使ってみた。
 発端は「相席ブロック」に対策をするという記事(例えば日経)なのだが、これを読みながらフランス人との昔の会話を思い出した。

 その時は、5人ほどのフランス人とランチを食べていた。ランチの話題なので色々とランダムなのだが、そのうち、フランスで少しだけ話題になったTGVの裏技の話になった。フランスの新幹線などと言われるTGVだが、もちろん料金は安くない。ただ、早期割引だったり、混雑していない時間帯の割引だったりと、色々割引がある。その割引のひとつを使うと、かなり安く長距離を旅できるという話だった。何やら複雑で自分には理解できなかったが、どうやら乗り継ぎがポイントだった。乗り継ぎの条件を工夫すると、通常は適用されないはずの大幅割引が適用されるという話である。
 ひと通り話が終わって
「へえー、そんなのがあるんだね」
と頷いていると、環境や食生活の話に一家言ある一人が、こちらを向いてこう言ってきた。
「お前、話がわかったか?」
もちろんよく分からないこともあったが、話の内容自体は理解した。だからこう答えた。
「詳しい条件とかは地名もあって分からなかったが、話自体は理解した。」
ところが、そのフランス人の反応は少々予想外だった。
「俺には分からなかった。こんなことは理解できない。TGVの価格設定には理由があって、その設定ルールの抜け穴を使って安くするなんて、意味が分からない。」
 今だったら某米国大統領が嫌いなウォーク(目覚めたやつ)である。
 何かルールを決めたのには理由があって、皆がルールを守るからその理由が満たされる。もしその抜け穴を使ってしまえばルールの意味がない。そう考えるのが法の精神の意味の一部である。法の抜け穴だろうが、民間のルールの抜け穴であろうが違いはない。だから合法なドラッグが問題となるのだ。それがわかっているからこそ、そのフランス人は理解できないと言っていたのだ。

 相席ブロックの内容についてはここでは書かない。知らなければ(かつ必要であれば)Googleなどで調べていただきたい。この話はキャンセル料が安いことを利用した予約の話である。ただ、キャンセル料が安いことには理由がある。その安いキャンセル料を使うことを「裏技」と思うか「悪用」と思うかには個人差がある。個人差はあるが、法の精神的な面から見れば間違いなく「悪用」である。
 TGV料金の抜け穴を理解できないとしたフランス人は、とても情熱的に仕事をするなかなか良いやつだった。今はリタイアしてしまったが、若い頃はアメリカに住み、世界中を飛び回っていたらしい。そこで学んだことが、生真面目であることだ。今は一番嫌がられるタイプなのかもしれない。ただ、ルールに抜け穴があったら穴を埋めるか使わないことが秩序を保つことだと理解していた点では、今どき一番必要な人間でもあるだろう。

 フランス人は列に並ばない。でも、意味が理解できればもちろん並ぶ。見方によってはよほど日本人より生真面目だ。そうした生真面目さが近年失われてきたのだそうだ。
 世界中、状況は似ているのかもしれない。

 そうそう、タイトルと写真の説明を忘れた。写真はフランスの鉄道である。その跨線橋から下を覗き込むとフェンスがあって、DANGERと書いてあった。危険という意味である。スペルは英語と同じだが、名詞でダンジェ。その隣に書いてあるのはMORT、死である。「死の危険性」とでも訳すべきなのだろうが、ストレートに死ぬよと書いてあると思った方が良さそうだ。法と違ってこちらは直接的な危険だが、長期的に見れば似たようなものか。

Bonne journée

RED-2

Anonymous said, colour of autumn leaves in Japan was red, and the rest is yellow. I don’t agree. Autumn colors are various and filled with a lot of colours on our planet. However, it is true that red is a kind of dominant colour at least around Tokyo because of cherry trees, dodan-tsutsuji (Enkianthus perulatus) and such street plants. In addition, late autumn weather is usually dry and clear then you may see some orange skies both in a morning and evening. And, needless to say, it is a good moment.

Bonne journée

RED

As winter approaches, the world tends to turn brown, but late autumn in Tokyo is surprisingly full of red. Sometimes the red nuts shine in the sun under the blue sky, and sometimes the dry sky at dusk is dyed red. In a sense, it also means that we will soon feel the crispness of the cold morning air. A medieval poet once wrote, “Mornings are the best in winter,” and I agree, because it gets warmer during the day.

Bonne journée

こちふかば -4-


 若い頃、それこそプロの仕事がどんなものかも分からず、ともかく言われたことをどれだけスマートに期待通りに仕上げるかくらいしか基準が思いつかなかった頃、アメリカからインターン生が来た。わざわざ日本を選んだのか?と思うのは最近の若い人だけで、50代以降の年寄りはなるほどと思うかもしれない。バブルが弾けたなんて言い方をするが、技術力も生産力も世界トップクラスだった日本は、魅力的なインターン先だったのだ。ただ、英語が話せないなどと言って尻込みをする管理職も多かったから、なかなか見つからないインターン先でもあった。案外日本は魅力的な仕事先だったのだ。

 実は、数年前にフランス人の学生から日本でのインターン先を探していると相談されたことがある。フランスで仕事をしている日本人は少なくないが、少々アカデミックな仕事に関わっていたので、相談しやすかったのだろう。だが、探すのは容易ではなかった。今時英語を尻込みしたわけでも、フランス語を恐れたわけでもない。当の本人は日本語を一所懸命勉強しようとしていたし、会話は英語で問題なかった。

 難しかった理由はコストだ。英語で尻込みしていた日本企業は、今ではコストで尻込みしている。人件費はとてつもなく大きなコストだ。会社を運営していれば、建物や光熱費などの費用もあれば、仕入れのための費用だったりも考えなければならない。でも、確実にかかる費用でかつ大きな金額となるのが人件費だ。インターン生に給与を払わないなんてことをやっているのは超短期の場合くらいで、研修だからタダってことはない。

 そんなわけで、最近ではコストが問題だから受け入れなくなってきた海外インターンだが、そのアメリカから来たインターン生は大変に良く仕事をする人で、あっという間に正社員と同じレベルで仕事をするようになった。社員の親睦会で日本のテレビの真似をして、周囲を楽しませることまでした。アメリカ人ってすごいなと感心させられたのだった。そのアメリカ人は日本人の仕事ぶりを見ていて、よく真面目に働くなと思っていたらしい。

 インターンの期間(確か半年だったと記憶している)も半ばを過ぎた頃、ちょっとした事件がおこった。インターン生の働いていた部門の隣の開発部門がやっていたプロジェクトが、中止となったのだ。インターン生の仕事の一部は、その開発部門の作っていた英語のマニュアルをネイティブチェックして校正することだったのだが、当然その仕事も無くなった。それどころか、そのプロジェクトが中止となった開発部門はしばらくの間仕事が無くなったのだった。管理職は浮いたリソースを別なプロジェクトに回すとか、次の仕事を探してくるとか、それなりに忙しかったのだが、若い人たちは特段することもなかった。だから出社してはくるものの、残務整理を多少する程度であとはおしゃべりをして過ごしていた。

 インターン生から見れば何事かと訝しむところだ。日本語で色々話をしていても、誰もインターン生には詳しく説明しなかったから、数日して異変に気づいたインターン生が質問をしてきた。「何で仕事をしないの?」という至極真っ当な疑問である。真面目だと思っていた日本人が遊んでいるのだ。そうだった、彼は日本語が分からないじゃないかとプロジェクトの中止を伝える。すると、インターン生の反応は意外なものだった。
「ああ、そういうことね。よくあるよね。契約解除になるのかな。次の仕事がすぐ見つかるといいね。」
ここはアメリカじゃない。終身雇用だから次の仕事待ちだ。そんな説明はややこしくてうまくできなかった。そもそもインターン生だって仕事が危ういだろうに、当たり前すぎて気にしていないのだった。

 人件費はコストだ。だから仕事がなくなれば解雇する。そのくらいの発想で動いているのがアメリカ社会でもある。逆にいえば、そのコストである人件費を効率よく運営して価値を生み出すのが経営だ。

 ここまでは理解しやすい。不思議なのは、コストのかかる人を効率よく運営するためには、マイクロマネージメントも必要だと考える日本人が少なからずいることだ。「お前には金がかかっているんだ。その金に見合った仕事をしろ。俺のいう通りにやれ。」である。まあ、分からないでもないが、たいてい言われた側の感想は、「やれやれ老害だ。」である。

 人件費はコストだと書いた。コストとは使い捨ての償却される費用である。だが、欧州では、これを文字通りコストだと思って経営してはいない。多くの国が日本のような終身雇用で、解雇すれば多額の費用がかかるが、育ってくれれば金を生み出す投資先だと思っている。

 つまり、人件費は投資。コストがかかるから自由に発想させて、良い部分を最大限掬いとるのが経営なのだ。もちろん投資だから、マイクロマネジメントは厳禁である。日本の常識で働いていると、何か事件が起きた時に、少々面食らうことになる。