コンピュータネットワークで言うシステムは、グローバルに見れば、定型的な処理・操作を時間・空間に対して秩序を持って行うための枠組みである。例えば、社内の業務管理においては、
- 必要な情報を入力・収集
- 紙などに記録
- 整理して表示
- アクションの状況を把握
といったことが、間違いのないように一連の流れとして行われる事を強制する仕組みであると考えられる。そのためには、手順や情報の項目などが整理されていなければならず、その場その場の最適解では矛盾が発生することになる。システム・エンジニアの仕事は、全体としての最適解を探すということでもある。ひとりの利用者やある局面にとってどんなに優れた解を提供しても、それ以外にしわ寄せがあれば、それはたちまち使われなくなる。
一方、利用者から見れば、システムが提供するものはその結果でなければならない。販売数量を把握して、必要な生産量を正しく決定するといったことが、余分な作業をすることなく実現されることが重要である。すなわち、やりたいことを感じている利用者と、やりたいことが何であるかを明確化するシステム・エンジニアという2つの立場でシステムは構築されなければならない。
それは、言い方を代えれば、利用者にとっての利便性(ユーザビリティ)あるいは操作性と求める結果が確実に得られる一貫性とでもいうべきものの両立ということでもある。問題なのは、利用者によって求めるものが異なるということである。システムは、利用者によって使う目的が異なると言っても良い。
例えば、在庫を管理するシステムは、在庫を引き当てる目的でのみ使う利用者もいれば、不良在庫を分別し対処するために使う利用者もいるかもしれない。経営的立場であれば、総在庫金額の推移や回転率の分野毎の状況が知りたいかもしれない。顧客と販売契約を結ぶために在庫を引き当てた担当者にとって、素早い簡単な検索は必須である。もちろん、間違いはあってはならない。
やや異なるが、たとえば自動販売機であっても、2つの点からシステムは構成されている。ひとつは、コインを投入してボタンを押し、物品が出てくる仕組み全体であり、もうひとつは、自動販売機を管理して物品を補給し、売り上げを回収する整合性の取れた仕組みである。自動販売機を使う利用者と自動販売機を使って商売する側では目的が違って当然である。それでもなお、自動販売機はひとつでなければならない。
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