ne-ko-to-ko-to-ri

ネコトコトリ


肩古狸 鯨


   ネコトコトリ

夏の市街地の地図よりも深く
黒猫の足音ほどに赤みがかった踵の釘
トコ ト
トコ トコ ネコ
トコ トリ トコ ネコ トコト
コリ ネコ トコ トリ
重苦しい南風に連れ去られまいと
青い小石にしがみつく栃の実色の飾り羽
ンツ ンツ
ナツ デニム ウミ
ウミ ナツデ ニムニム
クロ ニム ナツ デニムニ ムクロ
冬の幹の隙間よりも空虚に
小鳥の囀りほどに青みがかった朽ちた種
コト コ
トコ ネコ ト
コトリ トネコ トコト
リネコ トコト
凍らない雨に流されまいと
キンとした針金に絡め取られる土色の骨
チク チタ
ハニ コオル ツチ
クチ タハ チクチ
コドウ コオル クチタ ダイチ
茫々と沈む冬の海図より重く
猫の瞳に写る小鳥ほどに黙した息

   カンゲンクゲン

湿気が溶けこんだシャツの重みに
上がらなくなった両肩と
白く凍った空に吸い込まれていく
ヒリヒリ痛む首筋とを
忘れようと歩き出す昨日

ギッタン カンゲン
クゲン ムゲン
ラッカン キッタン
ギーチョン グン
青野原に潜むスニーカー
蒸せかえる沈黙
耐えきれず鳴くキリギリス
蚊をつぶす手が誘う静寂
シンシン カンシン
シカン オカン
クウカン ゴッカン
シータン ズン
白い息に痺れ始めたスニーカー
諫言を重ねたメッセージ
不意に広がる空から落ちる六花
音の染み込んだ土色の死骸

無限 諫言 歓楽 苦言
思い出すには単純過ぎる昨日

   つきとうみ

星の重みから背骨をよじって逃げ出す前に
森の冷気にシワクチャの頭を捻り込む
とこ とこ みち
ある きと ころ
ねこ とこ とり
うんが みちそ ぞろあるき
東の大陸を流れゆく時代に
赤い果実から転げ出た種よりも重い空
みち とこ とり
きみ とひ とり
こと りと ねこ
うんが みちふ たりあるき
西の大海を遥かに見晴らし
くじらのため息よりも深く長く漂う小舟

   ブツバンテルン

ブツ
バン
バブンツ
ブバン
右の目尻を引っ掻くいかづちのカケラ。
茫茫たる摩天楼へとぶら下がるクモ。
有りもしない頭巾でゼンマイ仕掛けの頭を隠し、
気づきもしないエンジン音を遠ざける。
ザンザンと落ち続けるジュラ期の豪雨は
やがてブバンと鎮まりかえる。
ツブツン
ンテル
バブン
多忙だった昨日がガサつく午後と
自由とジョーシキの狭間に堕ちる後日と
強靭なジルコニア製の刃先が光る作業台と
バラバラに分解されたスケジュールとが、
自在に飛ぶ青光りしたチョウの飛ぶ伽藍の如く
何も変わらない今日を示す。
テルン
ブツバン
音を立てずに背後を走り抜ける猫。
見上げる先のいかづち。
バン!

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