Written only in Japanese as “cross-cultural”
どうしてこうもいい加減なのか。隣り合ったエレベーターくらいボタンの配列を揃えてほしい。そう思うのは、日本人だけなのか?あるいは、自分だけなのか。
世界中をこの目で見たわけでもないし、すべてがいい加減に出来ているというわけでもない。自分が見ている世界は、どれほど注意深く見つめようとしてもどこかで客観性を欠いている筈であって、そのある種自分自身でかけた呪縛からは逃れようもない。だから、世界が無神経に準備された乱雑なものから出来ていて、人はその整えようもない世界に苛立っていると考えるのは、いささか傲慢な考え方である。そうであっても、隣り合ったエレベーターのボタンの配列が異なっていることは、どうにも腑に落ちない。
「そのくらい大目に見ろよ」と思うむきもあるだろう。「いや、エレベーター2台に同時に乗らなきゃ問題ないだろう」そう考えるかもしれない。「それともお前はふたつに分裂する癖でもあるのか」と。
実は、この状況は、ホテル住まいなどで短期間いつもと違う場所に生活する時だけ問題となる。そのホテルに滞在して3日が過ぎたあたりからが問題なのだ。
ある朝、いつもようにウォーキングに出て、体を目覚めさせてホテルに戻ってくる。ロビーには並んでふたつの銀色のエレベーター。あなたは「上」のボタンを押してほんの少し周りを伺っている。奥の方からは食器がカチャカチャとぶつかる音とコーヒーの香りが伝わってくる。少しばかり空腹感。すると、不意に右側のエレベーターが空いて、中から誰かが出て来た。「あぁ、おはよう。」そう言いながら、危うくぶつかりそうになったひととすれ違いつつ左上の隅のボタンを押した。エレベーターが動き出す。「お腹空いたな。」と独り言。程なく開いたドアを出て部屋に急ぐ。そして気づくのだ。エレベーターホールの角にある花瓶も花も、かけられた複製の絵も、昨日とどこか違うと。エレベーターを振り返ると、そこには果たしてひとつ上のフロアーの番号。エレベーターの同じ場所のボタンを押したつもりが、違ったのだ。
日本のエレベーターの多くは、縦一列に番号が並んでいる。二列の配列でも縦書きの日本語のように列内で順番に並んでいる。だが、ヨーロッパでは二列で右左と順番に並んでいるものも多い。この配列、実は悪くない。左側の上から2番目のように、なんとなくパターンで位置が頭に入るのである。だからこそ、左右のエレベーターで配列は同じにして欲しいのだ。閉じるボタンはいらない。それよりまずは配列を直して欲しい。でないと不意に違う世界を味わうことになる。
さて、違うフロアに降りてしまったからは、自分の部屋があるフロアに行かなければならない。非常階段は、平常時は従業員用だ。再びエレベーターを待つ。そして開いたドアの向こうに笑顔を発見したりする。先ほどすれ違ったビジネスマンが降りてきた。
「部屋に忘れものをしたよ。君もか?またあとで。」
やれやれ、今朝はホテルのダイニングで朝食にするか。
向かって左の写真、「-1」が二つあるのが不思議です。
確かに言われてみると、こちらは建物によって、エレベーターによって数字の並び、
表示方法が違うことが多いと思います。
寝起きだったり、酔っていたりしたら、目的の部屋に着くのに時間がかかりそうですね 🙂
ちょっと変ですよね。「でも、実用上は問題ないでしょ」と主張してるようで、憎めません。
ただ、違うフロアーに降りた時の衝撃は大きいですよ。真面目に「どこか違う」と焦りました。